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『ジフナって首触るの好きだよね。』
「…そうだね。」
すりすり、彼の手が首に触れる。ちょうど鎖骨の上あたり。
付き合い始める前からの癖。
肌に埋まる頸動脈の、位置を確かめる動きのようだと
気づいたのは最近のことだった。
『…ね、くすぐったいからやめて。』
「そう言ってるけど、好きでしょ?こうやって俺に触れられるの。」
すりすり、すりすり
少しかさついた指が肌を滑る。
やめてと制止してみるも、本人にはさほど効果がないようだった。
そんな彼を見て、思考にふける。
『(…頸、首かぁ。)』
昔、雑誌がなにかの特集で、首周りのアクセサリーを贈る意味を目にしたことがある。
輪になるアクセサリーは一般的に「束縛したい」だとか「独占したい」という意味があったけど、
はたして、この行動の意味は何だろう。
常に"頸動脈"に触れられていた事を思い出し、
少しだけ悪寒が走った。
『なんで首なの…?』
「…なんでだと思う?」
恐る恐る尋ねると、返ってきたのは含み笑い。
肝心の質問には答えてくれない。
教えてもらえなかったことに、気を落とした私に気づいたのか
笑みはそのままに、彼は口を開いた。
「…強いて言うなら、俺は花盗人になりたいから…かな。」
『はな…ぬすびと…。』
「そう、花泥棒とも言うかもね。Aも覚えてるでしょ?」
『それはそう…なんだけど…』
―花盗人、はな−ぬすびと
花、特に桜の花の枝を手折って持っていく人のこと。―
ずっと前に古典で習ったその言葉を思い出す。
なんのことだが分からなくて混乱する私を横目に
彼は静かに言葉を紡いだ。
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ルナ(プロフ) - 晄さん» そう言っていただけて、とてもとても嬉しいです💕ありがとうございます😊 (2月14日 19時) (レス) id: c916babbac (このIDを非表示/違反報告)
晄(プロフ) - いやもう大好きです...💎💙 (2月14日 2時) (レス) @page17 id: 6b3500ac41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルナ | 作成日時:2024年2月7日 20時