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頬を撫でる風が少しだけ冷たくなった秋。
大きな満月が輝いていて、その明かりが部屋に射し込んでいた。
隣に目を向けると、綺麗に整った横顔。
その美しさに息を呑む。
美しさ故に感じる冷たさが、少しの不安を誘発して、声をかけずにはいられなかった。
『…はるとくん。』
「ん?どしたん、お嬢さん。」
低くかすれた声が鼓膜を揺らす。
月明かりが反射した、きれいな瞳が私を捉えた。
『どこかに、行ってしまいそうな気がして。』
「ふっ。かわいー。」
『笑わないでよ…。』
「嘘やって。すんません。」
くつくつと笑う彼にむっとしつつも、鍛えられた身体に腕を回して、ぎゅーっと抱きつく。
彼の香りが近くなって、不安が少しだけ和らいだ。
「不安になったと?」
『…ちょっとだけ。』
「そっか。」
大きな手が伸びてきて、優しく頭を撫でられる。
ぎゅっと抱きついているからか、トクトクと一定のリズムを刻む心臓の音が耳元で響いた。
大丈夫。
彼は、ちゃんとここにいる。私のそばに居てくれてる。
頭をかすめた不安を、すべて、かき消すように、そんなことを考えていた。
悶々と考えこむ中、すーっと息を吸う音が耳元で響いて、顔を上げる。
存外、静かな瞳と目があった。
「…俺さ、Aがおらんと、耐えられんよ。生きていかれん。」
『うん。』
「ちゃんと、伝えとかんとあかんかった。」
『ううん。ちゃんと、ちゃんと知ってるんだよ。』
頬を次々と涙がこぼれて、その雫を、彼の大きな手がひとつひとつ拾っていく。
ストレートな言葉が心に響いて、とぷとぷと、暖かい気持ちが胸を満たす。
「…好きになるんも、一緒におりたいって思うんも、Aだけ。」
『ん。』
「そんくらい、Aのこと、愛しとーと。
頭から爪先まで、全部ぜんぶ好いとーよ。」
恥ずかしがり屋で、いつもは、こんなこと言ってくれない。
だからこそ、その言葉が本当だって、心からの言葉だって、理解できる。
『はるとくん。』
「なんすか。Aちゃん。」
『
私からは、少し遠回しな愛の言葉を君に。
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ルナ(プロフ) - 晄さん» そう言っていただけて、とてもとても嬉しいです💕ありがとうございます😊 (2月14日 19時) (レス) id: c916babbac (このIDを非表示/違反報告)
晄(プロフ) - いやもう大好きです...💎💙 (2月14日 2時) (レス) @page17 id: 6b3500ac41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルナ | 作成日時:2024年2月7日 20時