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目をそらした私を見て、彼が静かに口を開く。



「…なぁ、もう気づいてるんやろ。そんな鈍感でもないやん。」

『何言って、』

「…ずっとずっと好きやった。Aちゃんのこと。」

『…。』

「苦しんでる姿を見ると、同じくらい苦しいって思う。涙をちゃんと止めてあげたいし、俺が幸せにしてあげたい。」


好きだと明言されたのは、今回が初めてのことだった。
いつの間にか涙で潤んだ彼の瞳に私が映る。

こんなにも優しくて綺麗なこの人を、苦しめていたのかと罪悪感に苛まれた。



「今すぐ好きになってなんて言わん。
でも、今はそばにいさせてや。お願い…。」



こぼれ落ちた雫が、

ほろほろと白い肌の上を伝う。

彼らしい綺麗な涙だと

そう思った。




『よしくんのこと、きっと傷つけるよ。』

「そんなん気にせんでええから。」

『…でも。』

「Aちゃんお願い、頷いて。」

『…だめだよ。よしくんには、もっといい人がいる。』




その瞬間、ものすごい勢いで壁に押さえつけられる。

こころなしか、怒りが滲んだ表情に、背筋が凍った。



「……Aの優しいところ、ほんまに素敵やと思うよ。
そういうところも含めて大好きやし、愛しとるから。

でもな、今のは優しさとちゃう。俺を言い訳にせんで、ちゃんと俺と向き合って。
ほんまはどう思ってるん。」




真剣な瞳と視線が交わる。

逸らすことを許さないとでも言うような迫力に思わず生唾を飲み込んだ。



『…よしくんは、』

「…うん?」



絞り出せたのは、蚊の鳴くような、小さな声。

それでも、優しい返事が返ってきた。



『よしくんは、私の呪いを、解いてくれる?』

「…もちろん。
世界一大切なAちゃんのお願いなら。」



拒めなかったのは、私の弱さか、

それとも密かに彼に惹かれていたからか。


よしくんは、ふわっと優しく微笑んで、

私の左手を包みこむ。



「嫌やったら、ちゃんと言うんやで。」

『…うん。大丈夫。』

「…わかった。」



ゆらりと、今までとは違う眼差しと視線が交わる。

私の前に跪いて
捕らえた左手を優しく持ち上げる。

慈しむように撫でたあと、その薬指に噛みついた。




薬指に約束を結んで。

(薬指の呪いを解いて。)

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ルナ(プロフ) - 晄さん» そう言っていただけて、とてもとても嬉しいです💕ありがとうございます😊 (2月14日 19時) (レス) id: c916babbac (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - いやもう大好きです...💎💙 (2月14日 2時) (レス) @page17 id: 6b3500ac41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルナ | 作成日時:2024年2月7日 20時

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