たとえ、君が犬でも -起- 【JM】 (ページ12)

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『カラコン、入れてもいいですか？自分でしますか？』

「…入れてください」

ほぼ毎日入れてんだから、苦手なことはないけど、なんとなく。

はい、と一言返事をすると、彼女は至近距離に近寄って、派手な見た目には不釣りあいなほど、ネイルも何もしてない、短く揃えられた爪のある指で、俺のまぶたに触れた。

細い指がそっと近付いていって、ゆっくりとコンタクトがのせられる。

『まだ。私の指を目で追ってください』

左、右、上、下、と指を目で追うと、コンタクトが安定した。

『すぐに目を閉じると、浮ついてるコンタクトが落ちてしまうことが多いので、一人で入れる時も今の、してみてください』

顔が遠のいてから、俺は自分が息を止めていたんだって気付いた。

バレないように、そっと息を吐いて、吸ったら、なんか、すごく。

いい匂いがした。

『このままヘアセット入りますが、さっきの前世の話、続いていいですか？』

「俺のトキメキ返して」

彼女の匂いにキュンとしたばかりなのに、現実に引き戻されてスンっとなった。

彼女はトキメキ？って聞き返して来たけど、俺はいいからって手を振って、仕事を進めるように促した。

前世が犬ってなんなんなん？

ほぼ初対面でそんな話してくる人って、ヤバくない？