◇SJ◇ ページ5
やっぱり、Aは俺を好きだった。
それがこんなに嬉しいなんて、それはもう完全に自覚はあったけど、間違いなく俺の中でも…そう言うことだ。
昨日の怯えも、不審な態度も、ベッドでの別人もきちんと話せる理由があって。
…まあでもたぶん、それだけじゃ無い。
情緒不安定って良いほどのAは、そこに何かしらのトラウマ的なものが根深くあるの、わかりすぎるほどだけど。
それもこれも、今俺が好ましく思う人格を形成している一部だと思えば、全然気にならない。
『ふっ…んっ、ん…』
最初っから舌を絡める濃厚なのしてるけど、応えるAの舌がおっかなびっくりの及び腰で、それでも逃げずに受け入れようとがんばってる。
何、そのウブな感じ。
昼は貞淑、夜は淫婦の見本のような行動されて、あざとさに引くかと思うでしょ？
引くわけないよ。
あざといのもテンプレも、わかりきったお約束とかなんでそれがウケると思うの。
テンション上がって、楽しい気持ちになるからだって。
「A、かわいい」
お互い床で、ぺちゃりと座ったAに膝ついて顔だけ寄せて口付けてる格好だったんだけど、その手を取って丸めた指先にちゅっと唇落として囁いたら、目に見えて真っ赤になって、唇がふにゃっと歪んだ。
美しい人間は見慣れてる。
だからこれは造作とかは関係なく。
自分が好意を抱く人が不意に見せる、
幼いと思えるくらいのあどけない、
素のままの心細げな表情に、
心動かされない人間はいない。
俺は何か映画のワンシーンでも観るみたいに、うっとりと俺を見つめるAの恋顔を眺めて微笑んだ。
これから愛の告白してくれるのかな、って期待に胸がワクワクして、なんかこっちも照れてくる。
Aはためらいがちに何度か口を開いて閉じて、意を決したように俺に掴まれてる方の手を、ぎゅっと握って。
『ジニ、オッパ・・・っ、あの、わたし』
「ん？何？」
『つ、付き合うとかは良いんです』
「…ん？」
『私みたいな面倒な人間、大事にしてくれなくてもいいです』
「んん？」
『だから、その…』
『セ フレにしてもらえませんか…？』
予想外過ぎるって。
それは。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年5月17日 13時
