◇SJ◇ ページ24
玄関のドアを開けて姿を表したAは、正直想像していたような格好じゃなかったから、本当に言葉もないくらいびっくりした。
オーバーサイズもはなはだしいボタンシャツを、胸の辺りにいくつか止めただけのルーズな胸元は、カップのあるキャミソールしか着てないみたい。
ワンピースみたいになってるシャツの裾から生足がにょきっと伸びてて、下手したらその下、下着しか履いてないんじゃないかなって思うくらいの、太ももの上の方まで見え過ぎてる。
『入って！早く！！！』
俺を掴んで、焦ったように家に引っ張り上げるAをほとんど感動すら覚えながら、されるがままに室内へ。
Aが電話に出てくれた時に、ほとんど思いつきで家まで来たけど、まさかこんなにすんなり上げてくれるなんて、それも全く想定外で一瞬挙動に困ってしまった。
『あなた、自分が何者なのか本当にわかんないの？私に馬鹿馬鹿言うけど、自分の方がよっぽどだよ！！』
電話口で泣いてた顔が、名残で赤くしてる目が、俺を心配するあまりの怒りで頬が赤らんで、むしゃぶりつきたいくらいに扇情的だ。
て言うか、Aはほんとに。
そんなにも唯一無二なほど美しくて、優しくて、危機感ガバだからひどい目に遭うんだなんて、思ってても言わないよ。
お陰で俺はこうして上がり込めてるし。
付け入る隙ならいくらでも。
「俺の心配？自分の心配したら？こんなストーカーみたいな男、何無防備に家の中にあげてんの」
俺の言葉に反射的に腹立ったのか、頭の上から蒸気でも上がるんじゃないかってくらい、眉釣り上げて怒ってる。
ああ、かわいい。
愛しい。
「会いたかったよ」
ぽろっと本音が口から落ちたら、Aの眉毛がすとんと落ちた。
手を伸ばせばすぐに抱きしめられる距離だけど、そんなことしない。
両手を胸の前で組んで、触る気無いよって態度で示して。
「キスもしたいし、めちゃくちゃ抱きしめたいけどさ。付き合ってないからそんな不誠実なこと、しない」
「ねえ、なんで俺がこんだけ問題ないって伝えてるのの、かたくなにノーって言い続けてるわけ？」
「俺のことを思うなら、
俺のことを受け入れて、
俺の彼女になればいいのに」
言葉の距離感は、ゼロだけどね。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年5月17日 13時
