理想と真逆の人 2 【JN】 (ページ17)

今日:32 hit、昨日:15 hit、合計:70,240 hit

◇ ページ17

パーティが終わって、少しお酒が入ったこともあって俺は、寄宿舎に帰るのがなんだか面倒だったので、会場になってるホテルの部屋、会社が取ってたとこそのまま使わせてもらうことにした。

ユンギも誘ったけど、俺の話を聞いてなんだか創作意欲が湧いたって言ってこのまま会社に行くらしい。

あいつ、ほんと音楽の奴隷だなって、さすがに呆れるよね。

ユンギみたいに自ら手綱を渡して社畜化するやつ、他に知らないよ。

風呂から上がって、テーブルの上に置いてあった携帯を見たら、ヨンエちゃんからのメッセージの通知が来てた。

ヨンエちゃんに先に聞きたいことをは、実は一つだけだった。

「Aが何か事件に巻き込まれた件、何か知ってる？」

会場で話せる話じゃないと思ったから、こうして回りくどいことをしてるわけだけど。

俺はそこに表示された通知の数を見て、どうも簡単に説明できる話じゃないみたいで、ヨンエちゃんにけっこうな手間かけさせてることを少し反省しつつ、ソファに腰を降ろした。

「…酷い」

ヨンエちゃんのメッセージの半ばで、俺の口から漏れた言葉はそれだった。

襲われたとか、そんな次元の話じゃなかった。

幼少期の事件と、今年起きた同じ犯人が起こした事件。

これがニュースにならなかったのが、本当に不思議なくらいの事件だった。

きっと誰も死ななかったことと、解決がスピーディーだったこと、それに芸能関係に深く関わってる事務所のスタッフだったから、方面からの何らかの配慮があったんだろうけど。

人に怯えるくらいの事があったんだって推察してて。

その意味を軽く考えてたなんてことは、ない。

犯人には殺意しか覚えないし、再犯の結果で罪は重いけど終身刑というほどじゃないことに、法治国家の限界の歯痒さに、やり場の無い強い怒りが腹の中を焼いて、吐き気がしてきた。

「アー…最悪」

Aは何も悪くない。

あの子のことだ。

俺の状況考えて、俺を拒否する理由も十分。

どうしたって俺を受け入れられないってことは、わかりすぎるくらいだよ。