紫苑が咲く頃に【H×H】 (ページ9)

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「悪ぃな、早い者勝ちだ」

「まぁ、残念です。大人しく差し出していれば…」

〝楽に死ねたのに〟、そう言い終わる前に背後に感じ取った気配。

振り向けば拳を振り下ろす男が視界の隅に映った。寸のところで避けたのはいいが、ジュエリーケースが指先から滑り落ちる。

指を伸ばしても届かず、タイルの上を滑って声をかけてきた女の足元へと。

「チッ、今のを避けるのかよ…」

「せっかく腕７回も回したのに無駄になっちゃいましたね、フィンクス」

「うるせー…で、目当てのモンはそれだけかよ」

「はい、これだけです」

先ほどまで自分のものだったはずのジュエリーケース、今や同業者がうっとりとした表情で眺めているのが気に食わない。

「お喋りに付き合う趣味はねぇんだがな…それ、返しちゃあくれねぇか？」