嘘つきと恋 (ページ4)

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episode4 ページ4

*Yoohei side

懐かしい夢をみた。

彼女に振られた時の夢。

「私達、別れよう」

注文していたドリンクの中の氷が音を立てたのが静かな喫茶店で俺の耳に響く。

頭が真っ白になった。

呆然とする中
彼女をみれば、みるみる内に曇っていく表情。

それでも、手放したく無いと思った俺は何か言わなきゃって必死に頭の中で言葉を探した。

「なんで？」

「...好きじゃなくなった」

グルグルと渦巻く胸騒ぎと焦り。

「最初から、そんなに好きじゃ無かった...」

「ただの遊び...みたいな感じで」

「でも、うん...色んな経験積めたと思うし...」

「感謝してるよ」

次から次へと紡がれるその言葉のどれも
彼女の本心には思えなかった。

本音を隠してる気がしたんだ。

そう思いたかったのか今になっては分からないけど。

「嘘、だよね...？」

「嘘じゃ無いよ...こんな事、嘘で言ったりしないよ？」

「じゃあ、なんで目見て言わないの？」

「...そう言う事だから。私もう行くね」

俺の問いには答えずに立ち上がって店を出ようとする彼女の腕を咄嗟に掴んだ。

「っ...離して！」

振り解かれた手と
今にも涙が溢れそうな君の瞳を見て俺の身体は鉛みたいに動かなくなる。

酷い事言ったのは君なのに
なんでそんな悲しそうな顔してるの？

「...バンド、頑張ってね」

「さよなら...」

そう言って背中を向け
彼女は俺の前から姿を消した。

あれから彼女を街で見かける事もない。

それでも俺達のバンドは徐々に軌道に乗って
あの時の胸の傷みとほんの少しの彼女への怒りだけが取り残されたまま、時間は過ぎていった。