FitnessClub JSB 3

こっそりアピールしてたせい ページ10

「ごめん」

「……え？」

「曖昧にするの嫌だから、
はっきり言うね。
何回も何回も、
ちゃんと線引きしようと思ったけど
できなかった。
Aちゃんはお客さんなのに」



今から言われることを考えて、胸が震える。

聞きたいような聞くのが怖いような、
複雑な気持ちに苛まれていたけど
潔い直人さんはきっぱりと思いを口にした。



「Aちゃんのこと、好きです」



特別扱いしてもらえてるんだろうなとは
思っていた。

そこには私への好意が
あるのかもしれないとも。

だけどいざ言葉にしてもらえると
ドキドキして嬉しくて、
胸が苦しくなって、
何も言葉が出てこない。



「お客さんのことを好きになって、
しかもそれでストレスを与えて苦しめるって
トレーナー失格だよね。
本当に、ごめん」

「いえいえ！そんな！
嬉しいです……」



直人さんに好きだと思ってもらえたことは
素直に嬉しい。

問題なのは、自分の気持ちだ。



「……正直に言ってもいいですか？
自分でもすごい嫌な女だなって
思うんですけど」

「ん……なに？」

「私が悩んでたのは、自分のせいで……
直人さんのせいじゃないんです」



直人さん本人に
こんなこと言うのはどうかと思ったけど、
嘘をついたりごまかしたりすることは
どうしてもできなくて、
自分の気持ちを正直に話した。

臣くんと直人さん、両方が気になっていること。

直人さんに優しくしてもらえて嬉しかったこと。

LINEのやり取りがとても楽しかったこと。

でも恋愛に関してブランクがありすぎて、
突然こんな状況になって戸惑っていること。



「だから直人さんが悪いんじゃなくて。
ぐたぐた悩んでる自分のせいだって、
ちゃんと分かってます」

「いや、でもそれは
俺がAちゃんのこと好きになっちゃって
こっそりアピールしてたせいだと思うし……」



そう言われて目を見開くと
「気づいてなかったよね」と言って
直人さんは笑った。

他の人なら絶対やんない→←俺の気持ちに気づいちゃった？

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