お弁当家族。 (ページ4)

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ピピピピ……

『…ん、……』

うるさくなり続けるアラームに苛立ちながら私はスマホを取ってそれを止めた

4時半からこんな鳴られたら困るって……
まあかけたの私なんだけど…………

『……あれ？』

スマホに表示された時間は“6:30”

『……やばっ！！！』

乱れた布団なんて気にする暇もなく私は1階に駆け下りた

なんか物音聞こえるけどアイツ起きてるのかな

起こしてくれてもいいのに。

『おはよう……っ！！！』

「あ、佳子ちゃんおはよう〜」

相変わらずのほほんとした男の手には

お弁当箱があった

机には数々の見覚えあるおかずが並んでいる

いつも私が作っているお父さんから学んだおかずばかりだった

『……作って、くれてたの？』

「佳子ちゃんほど上手にできなかったけどね、ほら」

男はさらに並べたたまご焼きを見せてくれた

形は歪で、それでも黄色くつやつやふわふわのたまご焼きは私の昔の記憶を蘇らせる

「やっぱり佳子ちゃんはすごいね」

『……なんで、こんな』

「毎朝見て学んでるつもりだったんだ、イメージだけは完璧だったんだけど」

「もう朝ご飯の時間だね。お弁当はもう詰めたから余り物で良ければ食べようか」

男は棒立ちの私に微笑みかけたあと、テーブルに緑茶とおかずと白米が並んだ

2人分の箸が置かれて男は先に席に着く

「佳子ちゃんも食べない？」

『……食べる』

私は男と向かいあわせに席に着いた

「『いただきます』」

私は手前から順に箸をつけていった

「美味しい？」

『……うん』

男は至極嬉しそうに笑った

「よかった！昨日の夜、下準備したかいがあった」

『……だから起きてたの』

「恥ずかしいけど生まれてこの方ちゃんと料理なんてしてこなかったから、朝だけで作り終える自信なくてね」

……バカみたい

毎朝私のお弁当見るために早起きして、作るために夜遅くまで起きて。

最後に、ほかほかと湯気を立てるたまご焼きを口に入れた

「……どう？1番凝って作ったんだけど」

『……おい、しい』

思わずグッ、と下を向く

涙が溢れそうになったから。
でもそんなダサいとこ見せられない

『でもうちは昆布出汁じゃなくてカツオだよ』

「わ、その時間起きてなかったからな〜！もう1回チャレンジしてみるよ」

『……これは……

お父さん自身の味だから、これでいいよ』

「…！お父さん…て僕のこと？」

『他に誰がいるの？』

「……はは、そうだね」

もう1度たまご焼きを咀嚼する

うん、新しいお父さんの味はこれがいい

『ご馳走様』

……やっぱり私はお父さんの作るお弁当が大好きだ