【Fischer's】あなたが好きです。【七色短編集】 (ページ4)

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カメラに写る君は　(マサイ) ページ4

マサイside

.....ある日のことだった。

俺は、お気に入りの場所で写真を撮っていた。

そこは夜の公園。

昼ではなく、夜の公園が放つ雰囲気が好きで。

静かに灯る街灯、寂しげに揺れるブランコ.....

あまり大きい公園ではないけれど、だからこそ、伝わる何かがあった。

「こんな公園で写真だなんてな.....」

そんな俺の声も、静けさにすぐ打ち消されて。

ここだけは、周りと次元が違う気がした。

カシャ.....

そうして、シャッターを押したと同時に、

バッ.....

OLらしき人がカメラの前を通り掛かった。

「うわっ...」

つい、顔をしかめる。

写真を撮ってるって、分からないのかよ.....

その女の人は、そんな俺に気づいたのか、俺の方を向いて、

「あ、ご、ごめんなさい！！写真撮ってたんですよね。」

そう、謝った。

彼女はとてもおどおどとしていた。

...でも、とても綺麗だった。

スーツに大量の書類が入ったバッグを抱えて、伸ばした明るめの茶色の髪の毛は少しボサッとしていて。

「あの、写真を撮るのに協力してくれませんか？」

気づけばそう言っていた。

「...えっ？」

きょとん、とする彼女。

いや、そりゃそうだよな、俺、変なこと言っちゃって.....

「あ、あの...」

「良いですよ？」

「え、良いんですか？」

予想していなかった返事だった。

「あ、じゃあ、ブランコに乗ってくれませんか？」

「は、はい！！」

さっき会ったばかりの人の写真を撮るなんて、不思議だな.....そう思いながら、カメラを準備する。

「こ、こうですか？」

「えっと、もう少し斜め上を向いて。カメラの方は向かないでください。」

「分かりました！！こうですか？」

「それで大丈夫です。じっとしててください。」

ブランコに座る大人。

大人に眠る無邪気さを表現したかった。

「じゃあ、撮りますね。」

カシャ.....

「よし、これで大丈夫です、ありがとうございました。」

「あ、あの、名前を教えてくれませんか？」

「な、名前ですか？」

「えっと、カメラを持つ貴方が、とても真剣な目をしていて、素敵だなって思って。」

「...俺はマサイです。貴女は？」

「私は結って言います。」

「良かったら、また会いませんか？俺も、貴女が写真に写ってる姿が...とても綺麗だと思って。」

「ふふっ、奇遇ですね。」

「連絡先、交換してくれませんか？」

「.....良いですよ。面白い人に出会えて嬉しいです。」

「なんですか、面白い人って。」

そのまま、連絡先を交換して、俺と彼女は公園を後にした。