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「有岡くんだよね?俺絶対髪切ってメガネ外したらかわいいと思うんだわ」
「俺も思うわ〜、いのお?だっけ、君のストーカー、あいつに見せちゃおっか?」
「なんならここで襲っちゃってもいいんだよ?」
反吐が出そうな言葉を並べられて、思わずへたりこむ。
怖い、足に力が入らない、過呼吸を起こしそうな口を必死で押さえて、唇を噛んだ。
「…っ、のお……」
「んー?なんて?」
一人の顔がぐっと近づいて、吐きそうになるのを必死でこらえる。
……俺今、なんて言った…?
「もしかして伊野尾の名前呼んだ?」
怒ったような低い声に、ようやく自分がこぼした言葉を自覚した。
俺が、こんな状況で、呼んだのは、
「いのお…っ」
へらへらと笑うあいつの名前。
何度も繰り返しあいつの名前を呼ぶ俺が、
ドンッ
四人を怒らせてしまったことは明らかだった。
***
シャキシャキと、耳の近くで恐ろしい音がする。
バラバラと落ちた毛が、腕にまとわりついた。
「…だいぶ短くなったんじゃね?」
「ぜってぇ可愛いって」
「顔あげてよ〜、ねぇ?」
気持ち悪い声は大分スルーできるようになった。
泣きそうで、泣きたくなくて、伊野尾に会いたくて、会いたくなくて。
わけわかんなくてうずくまることしかできない。
本当に、何分経ったのだろう。
ぎゅっと自分の体を抱きしめてたら、ガラガラと教室のドアが開く音が聞こえた気がした。
「だいちゃん!」
「っ、伊野尾」
ついに幻聴が聞こえたのかと思ったけど、どうやら本当に伊野尾が俺を探しに来てくれたらしい。
俺の中のどこか冷静な部分が、静かに分析をした。
「……そいつ、返してもらえます?俺のなんで」
「うるせぇんだよ、2年が調子乗りやがって」
「お前らみたいなクズ先輩にしたつもりはないですけど」
「お前…」
「だいちゃんを傷つける奴は俺が許さない」
なにが起こったのか、うずくまっていた俺にはわからない。
しばらくしてようやく顔を上げたら、心配そうな伊野尾の顔が見えて、四人はいなくなっていた。
「っ……」
のろのろと壁をつたって立ち上がって身体中についた髪の毛を落とす。
震える足で必死に体を支えて目元を拭えば、伊野尾がへらりと笑った。
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作者名:濃いピンク | 作成日時:2018年6月18日 21時