99輪の向日葵/皇天馬 ページ10
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「天馬!天馬!見て、向日葵咲いてる!」
「この向日葵俺よりでけえんだけど…」
「…もしかして天馬チビ?」
「お前よりは断然高えわ!!」
怒る俺を適当にあしらって目の前にいた彼女は高く大きく咲く向日葵のとなりに並んでみせた。
と、やはり身長差はかなりあるようで。
「お前結構身長高えのにな」
「やーい天馬のチービ」
「小学生かお前は」
「チッノリ悪いな……そこはやーい美人ーって叫ぶとこでしょ???」
「口悪くて性格悪いお前のどこが美人だ???」
「わー今日もいい天気だなぁ!」
「はは、やってらんねーわ」
バカにしたような乾いた笑い方をするもAは気にしていない。まあ元からこういう奴だしこいつホントに年上なのか?と疑う時もたまにある。たまに。
「向日葵畑って蜜蜂畑になんないのかな」
「なるわけね…いやなるのか…?」
馬鹿な会話をしていればふとこの向日葵畑の管理人のひとにある頼みごとをしていたのを思い出し、Aにここにいろと伝えてからこの場を離れた。
頑張れ、と軽く背中を叩かれおばちゃんに礼を言ってから彼女が待つ場所へ走って戻った。
喜んでくれるだろうか。なんて期待を胸に抱いて。
「A」
「うわっ、どうしたのその大量の向日葵…!」
「俺が頼んだんだよ」
「……相当高かったでしょ」
「金の心配か」
軽くAの頭を叩いてはあ、とため息を零す。
すう、と息を吸って彼女と見つめあった。
「……全然時間取れなくて、付き合って二ヶ月にもなるのにデートとかそういうの行けなくて本当に悪かった」
「……うん?」
「ソレのお詫び、っつーか。……そんな感じのやつ。生意気な年下でホント苦労してると思う。二人きりの時間取れないから飽きられてると思う。それでも俺は、…お前とずっと、これから先もずっと一緒にいたい」
「………飽きてなんかないよ。飽きてたらとっくに天馬のこと切り捨ててた。切り捨ててないのは、私も天馬と、」
そう言ってAは俺を軽く抱きしめた。そして、俺が差し出した向日葵の束を受け取って、ふんわり笑う。
「私も天馬とずっと一緒にいたいと思ってたよ」
ーー向日葵、が、咲いた。
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ベイクドピンク / 瑠璃川幸→←初恋列車の切符は片道。/ シトロン
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