私だけの王子様 / 向坂椋 ページ12
「お待たせ 椋くん!」
「Aちゃん。僕も今来たところだよ」
向坂椋くん、私の彼氏。私が好きで好きで仕方なくて、ダメ元の告白にまさかのOKを貰えてから丁度1ヶ月。
今日は1ヶ月記念の初デートということで 忙しいながらも放課後に椋くんが時間を作ってくれた。それにしても___
「椋くん、今の物凄く少女漫画みたいだった…」
「本当?良かった…!今日はAちゃんの為に頑張るからね!」
私と椋くんは大の少女漫画好き。デートの約束をした時には 「その日は僕だけのお姫様ね」 だなんて王子様発言をされて私の心臓は爆発寸前。
「行こう、Aちゃん」
「えっ、あ、うん!」
自然と私の手を取って歩き出す椋くんは王子様そのもの。男の子と手を繋ぐなんて私は初めてで、自然とやってのける椋くんはこういうのに慣れてるのかな、なんて。
「ここ、僕の従兄弟が大好きなんだ。すっごく美味しいからAちゃんにも食べてもらいたくて。」
そう言って連れてこられたのは 学校から少し離れた場所にある、人気のパンケーキ屋。注文に迷っていたら、椋くんが「両方頼んで半分こしよ?」と言ってくれたからお言葉に甘えることにした。
「椋くんの従兄弟、どんな人なの?」
「えっと、十ちゃんていって高校生で、凄く格好良くて甘いものが大好きで 僕と同じ劇団に入ってて憧れの存在。」
従兄弟のことを話す椋くんの目はキラキラしてて、さっきまでの王子様とはまた違った椋くんが垣間見えた。本当に尊敬してるんだなあと。
「椋くんは十ちゃん?のこと、本当に好きなんだね」
「もちろん!優しくて格好良くて男らしくて…」
「む、椋くん?」
「わあああ、ごめんねAちゃん!十ちゃんの事を1人でペラペラと!!」
「ううん。平気だよ。」
なんだか待ち合わせた時と今とで、人が変わったように といったら大袈裟かもしれないけど、椋くんの表情から言葉遣い、振る舞いまでだいぶ違う気がする。
私はどっちの椋くんも好きだけど、でもなんだかさっきまでの椋くんは違う気がして。
「その方がいいよ」
そう呟くと不思議そうな顔の椋くん。
「椋くん、頑張りすぎなくていいよ」
さっきまでの椋くんは王子様のように振舞おうと背伸びしすぎていた気がする
「いつでも優しくて足が速くて芯のある恰好いい椋くんは変わらなくて、私だけの王子様だから」
自分で言って恥ずかしくなってきたけど、今まで格好つけていた椋くんの赤面が見れたから満足です。
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