ベイクドピンク / 瑠璃川幸 ページ11
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事の発端は、昼休みであった。
いつも通り、幸と椋が昼ごはんを食べているときだった。今日のお昼の卵焼きはいつもより、ふんわりしてて甘い。そんな呑気なことを考えていると、「ゆ、幸くん!」と確か隣の席である彼女が、話しかけてきた。俗に言う二人は恋人同士というものであり、学校内でも有名なカップルであった。気を利かせた椋が「ト、トイレに…!」と足早にその場を去った。
無駄な気遣いに思わずため息をついてしまった。そんなことをしなくてもいいのに。彼女によると、秋物の洋服を一緒に買いに行ってほしいとのことであった。前々からずっと、彼と一緒にショッピングに行きたかったようだが、なかなか言い出せず中途半端なタイミングになってしまったようだ。
待ち合わせ場所に着いて気づいたのだが、今日が初デートである。彼女がどのような服装でやってくるのか、幸も少し楽しみであった。「ごめん、待った?」と現れた彼女は、今流行りのピンクのオフショルダーに、スキニーデニムを合わせた旬のコーデであった。なかなかのセンスに、幸も納得であった。
「幸くんのセンスに任せるね」
「任せて」
他人のコーディネートをするのは、好きだ。好きな人に、大好きな人が一番輝けるコーディネートができる日がくるとは思わず、幸も嬉しそうに頬を緩ませた。その姿を見て、今日彼が楽しんでくれるか不安だった彼女も、一安心であった。
今年のトレンドは、ネイビー系のアイテムであることを知っていた幸は、そのカラーを生かしたコーデにしようと、普段彼女が着ないであろうものを薦めてみた。
「MA-1とか着る?」
「え、えむ…?」
どうやら彼女に、難しいのは似合わないようだ。可愛らしいものが好きな彼女にカッコイイ服装は、お気に召さないようだ。ぱっと目に入ったのは、ベイクドピンクのロングスカートであった。ピンク色が似合う彼女にぴったりの衣装であった。
そして、ピンクに相性の良いグレーのトップスを合わせる。彼女にこれを試着して見てほしいと、渡してみる。
「ど、どうかな…?」
「うん、似合ってる」
素直にそう褒めると、恥ずかしそうに顔を赤らめた。そんな反応をされると、こっちが照れるのでやめて欲しい常々思う。どうしてこうも、彼女は初なのだろう。
無事に買い物を終え、嬉しそうに洋服を見つめる彼女。キラキラと目を輝かせ、まるで子犬のようだ。
「ありがとう、幸くん!」
「別に、楽しかったし」
次も、だなんて考えてるのはおかしいだろうか。
彼女には、ベイクドピンクがよく似合う。
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