happIness*2-19 ページ19
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大きな手のひらが私の頬に伸びてきて、涙を拭った後、
そっと近づいてくる彼のキスに、白いだれかを思い出す。
離したくなくて、離れたくなくて、
ぎゅうぎゅうと背中に手を回して抱きついた。
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泣きながらキスをねだるなんて、
よほど様子がおかしい女に見えたんだろう。
彼はわたしから少し離れて顔を覗き込んだ後、
いやいやと首を振ってそれを拒否する私を見て、
ぐっと形の良い眉をひそめた。
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「何かあった？」
「……」
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なにか？
何もない、私の声が出なくなっただけ。
仕事ができなくなっただけ、眠ることが多くなっただけ、
食事を摂れなくなっただけ、あなたの欲を満たしてあげることができなくなっただけ、
あなたの好きな私でいられなくなっただけ、
あなたの名前を呼ぶことができなくなっただけ、
あなたに「好き」だと伝えられなくなっただけ。
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「A？」
「……、」
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なにもないよと、首を横に何度か振る。
数度瞬きをした彼が、
少し諦めたみたいな表情をして、それからすぐにまたキスが落ちてきた。
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腰あたりに手を伸ばして、
シャツの裾から指を入れたら彼の素肌に触れた。
あたたかいそこに爪を立てて、引っ掻いたら、
降っていたキスが止んで、大きな目が私のことを見下ろしていた。
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「こら、」
「……」
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短い音で制止されるけど、
わたしはそれを聞かずにもう一度爪を立てる、
今度はさっきより強く引っ掻いてみたら、
大きな目の奥にどろりとした熱が見えた。
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「やめろって」
「、」
「……かわいいね、A」
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跡をつけるなと言いたいんだろう、
この仕事をしている以上、お互いの暗黙のルールだった。
少し低い声で私のことを叱るくせに、
目の奥はどろりと溶けていて、それがひどく矛盾しているようで少しおかしい。
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「誘ってるの？」
「、」
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返事の代わりに今度はゆるりと彼の肌を指で撫でた。
翔くんが、っは、と笑う、
とろりとした、甘い笑い方だった。
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