happIness*2-9 ページ9
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「ただいま」
「…」
「、A？」
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ふっと目の前で掌を振られて。はっとする。
顔を上げるとそこには翔くんがいて、私のことを覗き込むようして見ている。
意識的に口角を上げて、おかえりなさい、と口を動かしてみた。
翔くんはふっと私から目を逸らして、今日雨すごかったね、と言った。
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雨？と思って窓の方に目をやる。
締め切ったカーテンからは外の天気なんてわからない。
一日、日も浴びずに家の中にいたから雨が降っていたことすら知らなかった。
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そうだね、とメモ帳に書きなぐる。
あの日…事務所に寄ってしまった日から時間が少し経ったけど、
一人になると、いろんな事ばかりを考えてしまって、起きているのが億劫だった。
今日だって、起きているのか寝ているのかわからない、
夢と現実の間を行ったり来たりしながらうつらうつらとしていた。
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“ごはんたべる？”
と書いたメモ帳を握って立ち上がり、
こちらに背を向けている彼の着ているシャツの袖をく、とひっぱる。
ん？と返事をしながら振り返った翔くんに、文字の羅列を見せると
大きな目を少し細めて、食べる、と言って笑った。
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彼が笑ってくれたことが嬉しくて、
私は少し背伸びをして、顎の近くにキスをする。
目を丸くしている翔くんが可笑しくて、ふふふ、と笑ってキッチンへ向かう。
手に持った紙をくしゃくしゃと丸めた時だった、
後ろからお腹に回された腕がぐっと引かれて歩みを止められる。
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「、」
「…悪戯？」
「、」
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上から降って来る声に、私は首だけを動かして彼を見上げる。
大きな目には私が映っていて、
それだけで幸せなのだと、自分に言い聞かせて。
例えば、2番目でも3番目でも、彼が目の前にいて、
私のことだけを見てくれている時間が一瞬でもあるのなら、
私はきっとそれ以上を望んではいけないのだと。
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「どうせなら、こっちにして」
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鼓膜を震わせる低い声は、私が大好きな声。
もし、声を失ったのが彼だったら。
私は、彼のことを好きじゃなくなるんだろうか。
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キスが唇に落ちて来る。
目を閉じて、それを受け入れて、
ほら、愛されてる、って、何度も何度も反芻する。
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私が好きでも、彼が好きじゃなくなったら終わりだってこと、
そんなの、ずっとずっと前から分かっていたことだ。
この恋の主導権は、彼にあるってことだって。
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