STORM* fUll of happIness 2 (ページ16)

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happIness*2-16 ページ16

【黒川さんの時計が変わってた。
前のはこわれちゃったんだって、知らなかった。
黒川さんが、私から外れちゃったらどうしよう
わたしが戻った時に、いなかったらどうしよう

もどれるのかな
戻りたいな、どうすればいいのかな

壊れちゃったら、すてるしかないのに】

.

黒いノートに、どろどろとした気持ちを書き殴る。

止まらなくて、泣いた。

ほんとに酷い、誰にも言えない、誰にも見せられない、

だけど、私の本音。

.

【しょうくんは、今日もおそい。
会いたい、でも、やっぱり会いたくない
あの夜、誰と会ってたかなんて、聞けない

知らない女の子でも、文句言えない
わたしがわるいから
しょうくんが、好きなままの私でいたかった

嫌われるなら、あいたくない】

.

どろどろとしたその言葉たちが並んだそれをそっと閉じて、

机に額を打ち付ける。

痛かった、……また泣けた。

.

瞬きを何度か繰り返す。

ふらふらと部屋から出て、リビングに向かった。

時計を見る。夜、と言っても差し支えない時間だけど、

翔くんが帰ってくる気配はない。

.

(おなかすいた、)

.

空腹は感じるのに、何かを咀嚼する気分にはなれなくて、

冷蔵庫を開いて、眺めたあと、また閉じた。

蛇口をひねって小さなコップに注ぐ、冷蔵庫の中には冷えたミネラルウォーターが入っているのに、

それを取り出してキャップを開けることさえ億劫だった。

.

味のしない液体を口に含んで飲み干せば、

空腹も少し和らいだ気がする。

ぱちぱち、と瞬きをして、小さく息を吐く。

数日間固形物を食べなくても、人間生きていけるのだと、

この期間で私は知ってしまった。

.

ピコン、と音が静かな空間に響いて、メッセージの受信を知らせる。

のんびりと液晶を操作してメッセージの封を切る、

翔くんからだった。

.

"今から帰るね、夕飯はいらないです"

.

あの日、朝方に帰ってきた彼を知っている。

シャワーを浴びて、いつものボディソープの香りを纏った彼が、

私の部屋に静かに入ってきたことも、

私の頬を撫でたことも、「ごめんね」と言ったことも。

.

寝ている振りをしていた私に、きっと彼は気づいていない。

だから私も色んなことに気づかない振りをして、

いつもみたいに笑って、大丈夫だと繰り返して。

.

"お疲れさま、気をつけてね"

.

いつもみたいに、言葉を探って、彼に返す。