happIness*2-14 ページ14
(翔side)
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結局帰宅したのは朝方に近い深夜で、
冷たい廊下に小さく息を吐いた。
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パチパチと電気をつけて、荷物を置いた後、
痛む頭に拳を何度か打ち付ける。
鈍い衝撃が広がっただけで、頭痛が治まる気配はなかった。
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ジャケットを脱いで、シャワーだけ浴びる。
普通に考えて、よくないことをした。
甘えるように仕向けて、組み敷いて、キスをして。
その先を求めるAを置いて出てきてしまった。
布団にくるまる彼女はもう服を着ていたし、たぶんあの時既に"諦めていた"のだろう。
拗ねたように腕を振り払って顔を隠した数時間前の彼女を思い出して、またため息をついた。
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そっと音を立てないように、寝室に入る。
入り口には彼女に掛けたはずのパーカーがぱさりと落ちていて、反射的に眉を潜めた。
ベッドに近づいて、掛け布団をめくる。
そこにいるはずのAは見当たらなくて、はーっ、と長い息を吐いた。
最悪だ、ほんとに、良くないことをした。
急いでいたからって、何かに縋りつきたいからって、彼女を傷つけたら元も子もないっていうのに。
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暗く冷たい寝室を出て、隣の部屋の扉をノックする。
起きていることは恐らくないだろう、
最近の彼女がよく眠っていることを、俺は知っていた。
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「A？……入るよ」
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返事がないのも想定済みなので、一応声だけ掛けて扉に手を掛ける。
鍵が閉まっていたら……と一瞬思ったけど扉はすんなりと開いた。
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殺風景な部屋に置かれたベッドが、
ゆるやかに上下していて、今度は安堵のため息をついた。
よく眠っているらしい。
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「……A？」
「……」
「ただいま」
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そっとベッドに近づいて、顔を隠すように垂れていた髪の毛をゆっくりと撫でる。
覗いた瞼は閉じられていて、穏やかな寝息が聞こえてきた。
そっと瞼の縁をなぞる、泣かせてしまった。
ここで寝ているということは、俺と一緒に寝るのが嫌だったってことだろう。Aが眠れるのなら、別にどうだって良かった。
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「ごめんね」
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頬をするりと撫でる、……痩せている。
ふ、と息を吐いて、俺は部屋を後にした。
大きなベッドに横になる、悪夢から目覚める方法があるのなら、今すぐ知りたいと思った。
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