happIness*1-45 ページ45
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真っ白になったスケジュール表をじっと見つめる。
黒川さんが手書きで埋めていたそれと見比べて、
カットされた仕事のことを考えていた。
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レギュラー番組はしばらくの間私抜きの5人で継続されることになったし、
出演が決まっていた歌番組は時間の都合上キャンセルするわけにもいかず、
5人で出てもらうことになっている。
私が担当回の予定だったラジオも、ゲスト出演する予定だったバラエティも、
連載している雑誌のコーナーも、全部、5人のうちの誰かが埋め合わせをしてくれている。
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ただでさえ忙しい彼らの負担になっていることは明白だった。
なのに、声が出ない私は、どうしたって仕事をすることができなくて、
だけどその声が、いつになったら戻ってくるのかもわからない。
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あの時、肩をつかまれて振りむいた先にいたカメラが収めていた映像が
事務所からの発表のタイミングを見ていたかのように
世の中に流されたことを、知らない振りをして過ごしていた。
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本当は、どんな内容の記事と一緒に投下されのかも、
どんな編集で流れているのかも、
それに付随するコメントの内容も把握しているのに。
気づいていない振りをしていたら、翔くんが泣きそうな顔をしなくて済むから。
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私が気にして、気に病んで、少しでも落ち込んでいる素振りを見せたら、
優しいあの人は原因を考えて、突き止めて、
ありったけの優しい言葉で私を甘やかしてくれるだろう。
私のせいで忙しさを増している彼に、そんなことまで強いたくはなかった。
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何気なくつけていたテレビの中では、ニュースを取り扱っていた。
そういえば普段ゆっくりワイドショーを見ることなんてなかった、
白紙のスケジュールは、私の知らない時間を作り出す。
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"連日取り上げられていますが…こちらも心配ですね。失声症と発表された嵐の工藤Aさんの話題です。収録済の番組などを除くと来週あたりからしばらくレギュラー番組なども工藤さん抜きの5人で放送されることが決まっていまして…その中で特にファンの方からの声として多いのがアルバムやコンサートの話題です。嵐は毎年アルバムをリリース、そしてコンサートを実施しているわけですが、今回の件でどうなるのかというのは公式から発表はされていないためファンの中でも憶測が広がっているようです"
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スーツを着た人の淡々とした声を、
私はただ、聞くことしかできなかった。
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