happIness*1-38 ページ38
(翔side)
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「どうしようか」
「、ね」
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声が出ません、はいそうですか分かりました、
というわけにはいかない。
どうするべきか話し合うために集まったのだ。
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「え、Aは休みになるんだよね?」
「とりあえず1週間は理由を公表せずにリスケになりました、」
「とりあえず決めなきゃいけないのってなに?」
「アルバムとコンサート」
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歌が歌えないとアルバムは作れない、
アルバムがないとコンサートもできない。
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「曲だけ発注しておくってアリ?」
「そもそも声入れられない可能性あるなら曲発注しない方がいいんじゃないの?」
「アルバム作らないっていうのは?」
「コンサートもなしってこと?」
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色んな意見が出る中、
「今回のアルバムもコンサートも5人でするっていう案もあるけど」
というチーフマネージャーの言葉に、
「それだけはない」と言ったのは、5人全員だった。
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「曲の発注止めるならいつがギリ?」
「アルバム出さないとなるとコンサートの方も止めなきゃなので…
遅くても来月頭がリミットですかね…」
「そもそも声が出たらすぐ歌えるもんなの?」
「それは何とも…」
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足踏みを続ける話し合いに、
落ち着いた声でぴしゃりと言ったのは
最年長の彼だった。
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「やめよう」
「、」
「1週間待って、治る気配が見られなかったら中止にしよう」
「アルバムもコンサートも?」
「リミット突き付けられて、プレッシャーになったら意味ないじゃん」
「…」
「……どう?」
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そうだね、と同意したのは誰だったか。
それでいいよ、と言ったのは誰だったか。
そうしよう、と言ったのは、誰だったか。
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積み重なっていく同意の声に、
それしかないとわかっていても、
心がずしんと重くなっていくのが分かる。
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″1週間を目途に、工藤Aの症状の改善が見られない場合、
アルバム制作の中止、およびコンサートの中止を決定する。
なお、このことは本人には知らせないものとする。″
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「…ごめん、翔ちゃん」
「、いや…あれが最善だと思う」
「……うん」
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ひとり、ふたり、といなくなっていく会議室で
椅子に座ったまま動かない俺に、
智くんはふにゃりと笑って、だけどとても申し訳なさそうにそういった。
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「Aによろしくね」
「、うん」
「ん…おつかれ」
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扉の外に消えていく背中を見送って、
ああ、とため息をついた。
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