happIness*1-28 ページ28
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ベッドの中で、スマホをつけたら
浩樹くんと泰介くんからラインが来ていた。
今日はありがとう、という内容のそれに、
ぽちぽちと文章を打っていたら、寝室に翔くんが入ってくる。
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「…目ぇ悪くなるよ」
「んー…うん」
「何してんの、」
「ライン、かえしてる」
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ああ、今日は嫌な日だったけど、
それがなければとても良い日だったのになあと思う。
特に泰介くんがあんなに成長していたのは
私にとって嬉しい誤算だった、時間は平等に進むのだ、
私にとっての数年は、泰介くんにとっても同じ数年で、
その間にきっと、いろんなことを経験したんだろう。
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返事をし終えて、充電器につないだ後で
身体ごと隣にいる彼の方を向いた。
私に目が悪くなるよと言ったくせに、
翔くんの顔も人工的な光に照らされている。
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「…目ぇ悪くなるよ」
「んはっ、何それ俺の真似?」
「ん〜?似てた?」
「ちょっとだけ?」
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くすくすと笑いながら、でも目はまだ画面に向いたままで、
面白くなくて、ねえ、と声を掛ける。
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「寂しいから、腕まくらしてほしい」
「ふっ…はい、どーぞ」
「ふふふ…ありがとうございます」
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腕に頭を乗せたらようやく人工的な明かりが消えて、
画面の上を滑っていた指が、
私の前髪をどかすように掬っていく、ちょっとだけくすぐったくて
首をすくめたら、ふ、と息を吐くように笑われた。
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「…ミュージカル、楽しかった?」
「、うん、楽しかったよ」
「そう、よかった」
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死ぬ役だったの?と聞かれて、死ぬ役だった、と答えたら、
まじで死ぬ役だったのか、と言われた。
期待を裏切らずに舞台の中央で銃に撃たれて
命を落とした浩樹くんを見て、またじゃん、とちょっと思ってしまった。
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「あ、あとね」
「うん?」
「泰介くんが出てた!」
「…誰だっけそれ」
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記憶を掘り起こすようにした声を出した彼に、
月崎泰介、フィンセントの、とぽつぽつと情報を伝える。
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「あ、あ〜〜、あの若い、でっかい」
「そう、おっきいトイプードルみたいな可愛い」
「Aに告白して振られた」
「そういう嫌な覚え方するのやめてよ」
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ふふふ、と笑われる、
もう何年も前のことだ、私にとっても泰介くんにとっても…翔くんにとっても
過去のことになっている。
だから笑える、時間って、偉大だ。
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