happIness*1-22 ページ22
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向けられたカメラが、
不自然なほど光る照明が、冷静であるべき思考回路を壊していく。
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何が目的なんだろうスキャンダル？誰の、きっとわたしの、
彼氏がいるのか聞いてきた、ということは熱愛を主軸としたそれだろう
相手は誰だと思われてる？劇場まで追ってきたってことは浩樹くん？
浩樹くんと付き合ってるなんて噂、もうとっくに消えていると思っていた、何年前の話？
そうなるとただ私を追ってきただけ？だとするといつからつけられていた？
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ぐるぐると回るそれらと同時に、
心臓の奥がどくどくと異常な速さと音で危険を知らせる。
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「、ご期待に添えるようなことは、なにもないです」
「ええ？噂になってる人たくさんいるじゃないですか〜」
「すみません、これから打ち合わせなので」
「…お忙しい中すみませんでした〜またよろしくお願いしまーす！」
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咄嗟に嘘をついた。
うまく笑えている自信なんてこれっぽっちもない、
映像が出たらアウトかもしれない。
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震える手を隠すように、ぎゅっと掌を握りながら
速足で坂を下りていく。
しばらくして後ろを振り返り、光が完全に見えなくなっていることを確認してから
鞄の中から携帯電話を取り出す、観劇のために電源を切っていたそれは
立ち上がるのに時間を要して、それがひどくもどかしい。
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『＿＿はい、お疲れ様です』
「、黒川さ」
『どうしました？何かありましたか』
「週刊誌のひとが、カメラまわしてて、それで」
『いまどこですか』
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聞きなれた声を聴くと安心して、
端末を持つ手も、電話口に話す声も震えていた。
落ち着いた声を出す黒川さんの背後からは、カチャカチャと何かをしている忙しない音が聞こえる。
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「赤坂の、劇場の、」
『周りに記者は？』
「いまはいない」
『事務所分かります？そこからならタクシーで5分かからないです』
「…うん」
『僕もすぐ行きますから、中で待っててください』
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わかった、と小さな声で頷いたらすぐに、
通話は切らないで、このままで、と言われた。
そのあと何か喋るわけではなかったけど、
黒川さんが玄関を出る音、車に乗り込む音、エンジンをかけた音…
それらがガチガチに固まっていた心臓の奥をゆっくり緩ませてくれるような気がした。
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