よん ページ6
「ちょっと待ってな」
家に着き、鍵をドアにさして開ける。
「ほい、おいで」
部屋に入る様に促すと、嬉しそうに部屋に入ったA。かわいい。
『じゃますんで！』
「ほーい」
何気なく返事をすると、なんだか急に静かになった。
どうかしたのかと思ってAの顔を見ると、頬をぷくうとリスのように膨らませていた。
「ど、どないしたん？」
『じゃますんなら帰って、って言って欲しかった…』
頬を膨らませたまま、しゅんと項垂れている。
はっきり言って可愛い。無理。しんどい。
悶え倒れている心を落ち着かせる。
「じゃ、邪魔すんなら帰って〜」
『えへへ、あいよ〜！』
落ち着いてもなお、Aの可愛さに目を合わせられなかった。
それでも嬉しそうにぎゅっと抱き着いてくれるのだから一回気失うかと思った。
ありがとう世界。俺は今幸せです。
『わがまま聞いてくれてありがと！』
ずっとやりたかったんだ〜、と足をばたつかせてルンルン気分のA。
「…こんなんでええんやったら、何時でも付き合うで」
『！、ありがと！』
かわいい。
ホントは抱き着いたりしたいけど、なんだか恥ずかしいのと、塩を貫いてきてしまったから引かれるんじゃないかという不安で出来ない。
(甘えてぇ…)
『ごはん作んなきゃだ！キッチン借りるね〜』
ソファから飛び降りて、キッチンに向かっていくA。
なんて声を掛けたらいいのか分からず、その後ろ姿を見送るだけになってしまった。
こういうのって手伝った方がいいよな…でも手伝ってもいいのか？
(料理なんてしとらんし…邪魔にまってまうやろ)
でも料理してたら合法で甘えられるんじゃないかという考えがよぎって、頭を抱える。
そんな合間にも時間というのは流れていくのだから残酷だ。
『オムライスできたよー！』
「え、あ…早かったな」
『そう？頑張っちゃったのかも』
はずかしそうに笑ったAを見ていると、手伝えなかった自分に対する鬱憤も晴れて行ってしまうようだった。
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作者名：ヴォルペ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2023年12月29日 23時
