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「有未、お前そんなに俺のこと
大切にしてくれてるんだ、
幼なじみって大きいね、嬉しいよ。
全く…。
Aは俺のこと大切にしてくれないんだから」
もうちょっと大切にしてよ、そう言って
私にわざとらしく笑いかけた。
「うん!ゆづ、もちろん!
ゆづが一番大切。
ねえ、一緒にご飯食べよう!」
「容易くす触るなよ、有未。
お前より大切なやつがいるんだ」
そういって私の肩に優しく手をおき、
見たこともないような真面目な顔で
有未ちゃんを睨み、
「有未に用はないんだけど、」
そう言い放ち、私の手を強く握り、
ぐいぐいと手を引いて
屋上へ続く階段をのぼった。
『ねえ、』
「…」
『結弦くん、』
「…」
『……聞いてる?』
「…うわーー!
怖かったー!俺の顔見たでしょ!?
幼なじみにあんなこと言うとか、
あれほど緊張するものは無いね(笑)」
さっきの表情は何だったの?
スケートで鍛えた表現?
たくさんの疑問の中でも
一番の疑問、
それは、
『なんで私を』
「Aが好きなんだから」
『分かってるよね、
私、改めていうけど、
付き合っている人がいるの』
「そんなの知ってる。
お前は誘いに易々と乗っかっただけ」
『でも、好きなのは好きなの』
「しかたない、って言いたいところだけど
悪い、零には悪いけど、
Aを諦めることなんてねえから」
これには、どう答えるべきなのだろう。
ありがとう?ごめんね?
「だから、絶対に零を負かすよ」
『わたし私は気持ちなんか変わらないよ、
どんな事があっても、私は零くんが』
ぎゅっと熱を感じた。
きつくて、苦しいはずなのに、
抜け出したくない。
ずっとこのままもでいい、
そんな気はするけれど、
これはまずい。
こんなの見られたら、
有未ちゃんからも、零くんからも
嫌われてしまう。
しかも、ハグなんて…。
『離して』
「離したくない」
『こんなの見られちゃったらどうするの』
「離したら、
Aはきっと逃げてっちゃう。
そして、会えなくなるかもしれない。
だから、まだ、こうしていたい」
『結弦くん…』
「もし、苦しくなったら、
困ったりしたら、
僕のところにおいで、助けてあげる」
そうすると、がっちりとホールドしていた
腕の力を緩め、私を離してくれた。
そして、予鈴がなり、
自分を現実に引き戻してくれたのだ。
私は、誰を想う?
この感情は一体…
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作者名:五月女遥 | 作成日時:2016年12月28日 23時