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一人の少女が暗い路地に座り込んでいた
両足を投げ出し、背中は壁にあずけている
側にはあさられたゴミ箱が転がっていた
少女はまるで人形のようにピクリとも動かない
路地の外には繁華街が広がっていた
人々は路地に気づかず早足で過ぎてゆく
私、死ぬのかな…
少女はぼんやりと考える
短かかったけど、クソみたいな人生だったな
物心ついたときには母親がいなくて、挙句お父さんは死んじゃうし…
過去の出来事が次々と浮かんでは消えてゆく
これが走馬灯ってやつだろうか
でも死んだらこのクソ人生ともおさらばだ
少女は安らかな気持ちになって目を閉じた
意識がだんだん遠ざかってゆく
ああ、でも、心残りといえばひとつだけ…
昔、父に買ってもらった少女漫画を思い出す
うち、ビンボーなのに、無理言って買ってもらったんだっけ
…彼氏、欲しかったな
私も、あんな恋ができたらって想像して…
「ねぇ」
横から声が聞こえ、少女はびくりと体をふるわせた
少女の目がうっすらと開く
その瞳は茶髪の男の顔を捉えた
スッと通った鼻筋にきれいなアーモンド形の目
ミルクティー色の髪が風に揺れる様子はどこか神秘的ですらある
天使がいるとするならこんな人なのだろうと少女は思った
否、もしかしたら本当に天使が自分を迎えにきたのかもしれない
「死ぬつもりなの？」
そう、と答えようとした少女の目が男の手に釘付けになる
そこにはおにぎりがあった
なんの変哲もない、コンビニのおにぎり
男は少し驚いたように目を見開く
少女は無意識にそれに手を伸ばしていた
「生きたいの？てっきり死ぬつもりだと思ってた」
生きたい…？生きたいのだろうか、自分は
今生き延びても、どうせ数日後にはまた死にそうになっているだろう
狂いそうになるほどの空腹を思い出す
あんな目にまた遭うくらいなら今死んだ方がマシかもしれない
死ぬのは案外簡単だ
今ここで目を閉じればいい
男のなんの感情も浮かんでいない目と目がかちあう
まるでモルモットを見る研究者のようだ
その表情がなんだか癪に触った
人が死にそうなんだぞ、もうちょっと悲しそうな顔は出来ないのか
というか、私が死んでも悲しんでくれる人いないんだなぁ
漫画のヒロインとは違うのだ
そう考えると、ヒロインにも腹が立ってきた
私、彼氏つくって、ハッピーヒロインライフを送るって決めてたのに
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作者名：あ | 作成日時：2022年10月6日 22時
