【第四章】拝啓、理不尽な世の中へ。【リレー小説】

▼続 ページ4

「怪我は？」

「え？」

「あなたは怪我をしているの？」


少年はブンブンと首をふる。しかしその顔はどことなく青白く、かけたくもないのに気にかけてしまう。座り込んでフードの中の顔に触れる。ひんやりと、異常なほどに冷たい。また、顔をしかめる。


「あなたも行くといいわ。その方が、心配ないでしょう」


そう言って、立ち上がる。不快感から逃げるように階段を上がって取手に手をかけた。そこでふと思い出す。振り返って例の少年へ言った。


「彼女が起きたら告げるといいわ。話し合いの機会くらいなら儲けてあげると。それまでに私を論破させるくらいの提案を用意しておきなさい。いいわね」


そして勢いよく、扉を閉めた。
不快で不快でたまらない。彼らの目も、言葉も、行動も。言いなりになっている自分も。


「姉上、あの子、」

「大丈夫よ。送ったのは国営病院だわ。我が国に医学の発展は、凄まじいものだもの」


頬についた血を濡れたタオルで拭き取る。タオルに血がついて、赤黒くシミを作る。


「件。誰も部屋に人を通すなと伝えてちょうだい。1人になりたいの」


そう言って自室へと戻る。そしてベッドに沈み込んだ。ドレスについた血などは気にならず、とにかく、その苦しみから逃げるように。


「私は嫌いよ。あんたのことなんて」


その声は誰かに聞こえることなく、空中へ消えていった。

137,氷雪【朝霧零/is】→←136,天羽単【メロンパン×2】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す