宵闇の羽、羅刹の焔。弐【文スト】

第70話 ページ34

その後、ミミックに似た襤褸の人影の目撃情報はぱたりと絶え。
代わりに常に見張られている様な、奇妙な視線を感じる様になった。

けど。
どれだけ周囲を探っても視線の主は影のひとつも見つけられない。
姿は無いのに、何処に居たって見られている気がする。
一人の時も、任務中も、ポートマフィア拠点の中に居る時も。何なら紅葉姐さんと一緒の時でさえ、だ。

タイミングもぴたりと重なるし、犯人はあの得体の知れない組織の人間なのだろうと簡単に予想が出来た。
オレ以外に別段気付いた様子は無かったから、もしかしたら異能力の類なのかも知れない。

お世辞にもいい気分とは言えない。
けれど言ったって気付いて貰えない。
そもそも今は皆、ミミックとの抗争に回ってる。
手を煩わせるのは筋が違うだろう。

害の無い内に、何か手段を見つけて、オレがどうにかしないと。

……その判断は間違っていた。
オレは言うべきだったんだ。
姐さんでも、首領でも、中也でも。
誰でもいいからとにかく、オレのことを知る人間にこの件を話すべきだった。
手に負えない可能性に目を瞑ってまで抱え込もうとしてはいけなかった。

そうすれば、こうはならなかっただろうに。

気付いた時にはもう遅い。
あの不快な視線を何時もより強く感じる中、あたたかな赤が飛び散ってオレの頬を濡らす。

オレのせいで、構成員が二人。
見る間にもの言わぬ肉塊と化した。

第71話(尾崎紅葉side)→←第69話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す