第29話 ページ35
………………何と言うか、とてつもなく、気まずい。
前を歩く、出会って間もない兄妹、龍之介と銀の背中を眺めながら、オレは非常に居たたまれない気持ちに襲われていた。
…………あんなに格好付けるんじゃなかった。
取り敢えず、さっきの自分を殺したい。切実に。
任務の途中だった。
標的の追跡に夢中になり過ぎて、まだ地理を把握し切れていない貧民街の奥まで入り込んでいた事に気が付けなかった。
気付いたのはついさっき。
任務は達成したものの、改めて辺りを見回せばそこは知らない場所。
そして今、オレはこの辺りを寝床にしていると言う二人に道案内をしてもらっている、という訳だ。
…………絶っ対、呆れられたよな……。
「「「……」」」
言葉を発する事無く歩いていく。
時々、確認する様に銀がこちらを見る。
「………………龍」
沈黙に耐え切れず、オレは口を開いた。
「……」
だが、龍こと龍之介は振り向きさえしないで歩き続ける。
……聞こえなかったのか?
「龍?」
さっきより少し声のボリュームを上げて再び呼び掛けてみたが、龍はスタスタと歩き続ける。
「りゅー……」
更に声を大きくして呼ぼうとした所でようやく龍が振り向いた。
「……」
龍は何を言うでもなく、オレの方を凝視している。
「?」
「………………僕の事、か?」
「“りゅう”というのは、僕の事なのか……?」
「……ああ、いわゆる渾名って奴だよ。“龍之介”って何か長いだろ? だから、“龍”」
「中々悪くないと思ったんだけど」とオレが少し笑うと、龍は僅かに目を見張った様だった。
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fiest(フィエスト)(プロフ) - 怪盗MOONさん» コメントありがとうございます。不定期更新になっていますが頑張ります! (2019年12月29日 8時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗MOON - 怖い!姐さんが怖い!けど面白い!頑張ってください! (2019年12月28日 19時) (レス) id: a4bcfb41fb (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - はらさん» ありがとうございます。外しておきました! (2018年4月23日 10時) (レス) id: c32790ae98 (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグ外して下さいねー (2018年4月22日 22時) (レス) id: 3032af9fae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fiest(フィエスト) x他1人 | 作成日時:2018年4月22日 21時