［ 8話 ］ ページ10
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大晦日、私は実家に戻って来ていた。
日を跨いだ元日の午前2時頃、大毅から着信があった。
ライブがあるとかで東京にいるらしく、電話は、ライブが終わったという報告だと思っていた。
「もしもし、ライブ終わった？」
『おん』
「なに？元気ない？」
『ごめん、』
「なにが？」
『別れよ』
本当に突然で、言葉が出なかった。
いつもの悪ふざけなら、軽く返せるのに。
それができなかった。
大毅の声色がそうさせなかった。
涙も出なくて、口が乾いていく。
「どういうこと？」
『ほんまにごめん。こんな形で』
「ごめんって、大毅、」
『ごめん…』
「…わかった」
理由さえ聞けなかった。
信じられないくらい呆気なくて、心を半分以上持っていかれた気分だった。
最悪な年明けは後にも先にもないと思う。
私たちが一緒に過ごした時間は、合計してもこれまでの人生の内のほんの一部でしかない。
それでも一番、誰よりも、心から大好きだった。
もうこんな人に出会えることはないだろうと思うくらいに。
数ヶ月後、彼がデビューしたことを知った。
��俺が好きになったやつなぁ、ほんまに信頼できるやつやねん��
…嘘つき。
仕事に対してとても一生懸命で、熱い人だから正直、重荷になってしまうのではないか という不安はあった。
だけど、その理由はせめてあなたの口から聞きたかった。
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作者名：はしご | 作成日時：2020年8月31日 0時
