、じゃない。《桃》 (ページ49)

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「いいってそういうの」

「俺、真面目やって言うたよな」

「いっ、てない…」

「言うた」

いつもと違う

声も、表情も、この空間に流れる空気すらも

「俺、Aのこと好きやで」

大きな瞳が、私を吸い込んでしまいそうで

目を逸らすに逸らせなくなる

私の混乱に拍車をかけるように、ものすごいスピードで心臓が波打つ

「…それって、どういうこと？」

「伝わってへん？」

望は、弟で

私は、姉で

血の繋がりなんてないけど、そういう関係性じゃなかったっけ、私たちって

「俺は、Aが好き。女性として」

望の真剣な顔が、息苦しくさせる

「…本気で言ってるの？」

本気で言ってくれてるって分かってるのに、頭が受け入れようとしない

「ここまで言わせて逆になんで信じてへんの！」

「だ、だって、望、分かってる！？」

「なにがぁ！」

なぜかお互い躍起になって声が大きくなる

「…とにかく、ちゃんと考えた方がいいよ」

「なんやねんそれ」

「今日は私がベッド借ります。望はソファね！」

「えぇ、寒いやん！！」

「勝手に入って来たら、もうここには来ないからね」

一方的にとどめのセリフを吐いて、寝室のドアを閉めた

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