反英雄95話 ページ1
剣城side
薄らと目を開ける
ここは…
水の中にいるような感覚だった
仄暗くて少し見づらい
私は…敵に負けたのか
『貴方には分からない』
誰かの声がそう言って遠のいて行く
どんどん沈んで行っているようだ
意識はハッキリしているのに、何故か逃げ出そうという気分にはならなかった
約束、してしまったのに…
あれ…？誰とだっけ？何を約束したのだろう…
体はゆっくり落ちていく
ここに底はあるのだろうか？そこには何があるのだろう…
真っ暗で何も見えないから底が何処かも分からない
水面を見上げるとキラキラ光っていた
何の光だろう…
好奇心で上に上がろうとする
しかし、それは叶わなかった
上に上がることが出来ない
必死に足と腕を動かすが、水面は遠のくばかり
どうして出来ない？私が泳げないからか？
いや違う、下には進むことが出来るのに
遠くなっても弱くならない光に手をかざす
当然掴むことも触れることも出来なくて手は水中に虚しく垂れる
仕方がなく、私はまた流れに身を任せて沈んでいく
もう何でここにいるかも分からない
今まで何をしていたのかも忘れた
でも記憶の中に誰かいる
誰なのかは分からないが名前を呼んでくれた
どんなに頭を捻っても、思い出せなくて歯痒い
とうとう私は闇に包まれる
ああ…光は未だに明るいのに…
でも今は何だかあの光が鬱陶しい
眩しくて目障りだ
私は、光から目を背けた
.
.
.
.
約束なんか忘れた
頭にチラついていた人も何処かへ行ってしまった
剣「あの光が………
＿＿＿＿＿＿正義が憎い…」
.
目障りだったら、憎かったら消せばいい
邪魔するやつは
.
消せばいい
.
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作者名：酸辣湯麺 | 作成日時：2020年4月15日 17時
