第804話 ページ13
AはBARのあるビルの屋上にいた
満天の夜空の下、両膝を抱えて小さく座り、その膝に顔を埋めていた
「A」
『･･･』
アイツなら気配で俺が来ている事すら分かっていたはずだが、声を掛けても 全く反応する素振りはない。重い溜息が出た。面倒くさくて仕方ねえ
「おい」
Aは背中から直接伝わる温もりに驚いたのか、肩をビクッと上げた
「まだいじけてんのか」
Aを足の間で挟むように座り、背中から抱きしめた。五本の指でAの小さな手を握ってみると、少し冷え始めているようだった
「怒鳴った事は･･･謝っとく。黒霧にも言われたしな」
『･･･』
「･･････イラついた･･･」
あんなにも感情的になるお前を、俺は初めて見たから。
そうさせたのが どこぞの知らん男だった事も･･･その男に、お前が妙に固執している事も。そんなよく分からん男の為に、自分の体を傷付けようとしている事も、全部。
『プッ』
「何で笑ってんだ」
『兄さん･･･何か妙な想像してない？』
馬鹿にされてるようでムカついたが
ようやく笑ってくれたワケだし、許してやろう
『轟焦凍には、勝つよ。私のプライドにかけて』
「！」
『あの男･･･なんか癪に障るんだ。すごく嫌い、大っ嫌い！考え方も、価値観も、性格も、何もかも違って･･･とにかく根本的に合わない
勝つなんて生温い。私にこんな屈辱を味わわせたアイツを、私は許さない！この手でグチャグチャに踏み躙ってやる』
そう宣言したAの目にあるのは、侮蔑と敵対心だけだった
(本当にソイツが嫌いなんだな･･･)
『負けてごめんなさい。次はもっと、上手くやるから』
「･･････」
悔しそうに奥歯を噛み締めるAを一層強く抱き寄せた。俯くAの頭に手を置いて、さらに自分の頭を乗せる
「嫌なら辞めて良いんだぞ」
そう言ってやると、Aは肩をビクつかせて、無理やり体を翻し、縋るように抱き着いてきた
『そんな事言わないで』
「･･･あ？」
『私･･････私･･･次は勝つから。強くなるから、頑張るから。ちゃんと･･･兄さんの役に立つから』
「･･････」
首に抱き着くAの頭を撫でながら、不思議に思う
(別に･･･役に立たなくたっていいのに)
とりあえず、夜はまだ少し冷える。
冷たくなり始めたAの体を持ち上げて、俺は屋内へ戻った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3990人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結衣(プロフ) - 救いはあるのですよね？？？？ (4月27日 17時) (
レス) @page50 id: e25d5229fc (このIDを非表示/違反報告)
Sana(プロフ) - 更新ありがとうございますー！もうほんと！面白くて大好きです！これからも応援してま〜す！ (4月26日 19時) (レス) id: 3115c6fd91 (このIDを非表示/違反報告)
愛 - 好きです！！！まじで！！！！この小説が好きすぎて頭から離れません！綾林檎さんのペースで頑張って下さい (4月26日 17時) (レス) id: 0f2e86f85b (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - めっちゃ面白すぎます！！！更新楽しみにしてます！！！ (4月26日 15時) (レス) id: 8f7b32c140 (このIDを非表示/違反報告)
リズ(プロフ) - めっちゃ面白いです！展開が最高すぎます！これからのストーリーが楽しみです！ (4月25日 23時) (レス) @page45 id: 875ab28994 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綾林檎 | 作成日時：2024年2月7日 9時
