第771話「地獄の水無月家」 ページ29
「お帰りなさいませ、A様」
轟家での夕食を終えた水無月は、電車に乗って水無月家本家のある最寄り駅に着くと、水無月奏雨の一番弟子
春月は幼い頃、当時現役だった水無月奏雨の演技に魅了され、以来 伝統芸能の道を志し、18歳の時 憧れの存在である奏雨のお眼鏡に適い 弟子入りを果たしたという女性で
去年、40歳を迎えた。
「こうしてA様を車に乗せて、本家まで帰るのはお久しぶりですね」
『･･･そうかもな』
春月は奏雨の付き人時代も長かった為、車の運転もできる。
Aも小学生の頃は、春月に送り迎えをしてもらっていた。だが、ある時からAは 学校帰りに寄り道をしたり、遅くまで家に帰らない事も増えた為、Aが『もう送り迎えはしなくていい』と言ったのだ
『･･･』
Aは車の中での一分一秒が まるで数時間かのように長く感じ、地獄に送り込まれるような最悪の気分だった。
.
水無月家本家に到着すると正門に車を停め、
「帰ったのね」
電気もつけていない薄暗い稽古場で
Aの祖母 水無月奏雨がポツンと立っていた。
『･･･』
この稽古場は、住み込みの弟子達が使う稽古場とは違う。水無月家を継ぐ者が、跡を継ぐ人間としてあらゆる知識や教育を施される空間だ
『(ここでは舞や水芸、琴やら三味線を･･･)』
一歩一歩と足を踏みしめる度に、氷のように冷たいフローリングがAに嫌な記憶が呼び起こさせる
『(向こうの畳床では、礼儀作法や水無月家の帝王学を･･･死ぬほど叩き込まれた)』
壁に掛けられた 立派な薙刀、床の間の掛け軸に、その下にポツンと置かれた木製の皿立て
『･･･』
本来なら30cmもの絵皿を飾り立てていたが、小学生の時 稽古中に壊れ、以来 何も置かれてない
『(･･･ここに足を踏み入れたのは いつぶりか。小学校を卒業するまでは毎日のようにここにいた。自分の部屋より ここにいる時間の方が長かったくらいに)』
＿＿パァンッ！！！
『･･･』
キ──ンという耳鳴りを感じながら、Aは(あぁ、しまった)とまるで他人事のように思う
(考え事をしていて、油断した)
僅かに血が滲む左頬を指でなぞり、ヒリヒリとした痛みを感じながら ほくそ笑む
『ご立腹のようで』
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りんご - やばすぎる、、、水無月ちゃんマジでわかんないよぉ！！！ひとつ前の話でめっちゃドキドキしてたのに急に不穏、、。更新待ってます切実に！！！！ (2月3日 16時) (
レス) @page50 id: 74b2d2c40a (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - …………え？ちょ、理解がぁぁぁ！！！追いつかないです…。楽しみすぎて大好きです！ (1月31日 18時) (レス) @page50 id: c175c601fa (このIDを非表示/違反報告)
みみ - ほんとに激アツ展開すぎて、、おもろすぎる笑笑続きが気になりすぎて毎日このページを開いてます！更新待ってます！ (1月30日 5時) (レス) id: d76e5356db (このIDを非表示/違反報告)
tr. - 驚きすぎて事実を受け止めきれない…読みながらどういうことだよ…！？ってなってしまった、流石に続きが気になりますよこれは…！！ (1月28日 18時) (レス) @page50 id: f75fa0a2e7 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 一体どういう事なんだ！？！？続きが気になりすぎます､､､！！！ (1月28日 5時) (レス) @page50 id: 3d02d57991 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綾林檎 | 作成日時：2023年9月9日 0時
