「俺たちのヒーローアカデミア」2 (ページ44)

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第89話ページ44

バンッ！

更衣室の扉を乱暴に開け閉めし、鍵をかけた

『･････。

(アイツら(B組)と騎馬戦で戦ったあたりから、感情のコントロールがしきれてなかった

この私をあんなふうにからかう奴が久々で、つい反射的に････気が緩んでたみたい。平常心を装わないと････････････ッだけど)』

ガンッ！！

Aはロッカーに拳を叩きつけた

『(あの癪に障る男(とどろき)を思うと･･･どうもな)』

青筋を浮かべるAの頭には

轟と戦って、負けたあの日の記憶が鮮明に蘇っていた

深く深呼吸をして、煩悩を振り払うように首を振る

『(まぁいいわ)』

チアリーダーの服を脱いで、そのままロッカーに押し込んだ

『(轟と戦える。雪辱を晴らせる

これは最早運命なのかもね。出られるはずのなかったトーナメントに出られる事になって、轟と戦うチャンスに恵まれた)』

"奴を完全否定する"

『(ごめんね轟。アンタは私が倒してあげる。今度こそ。完膚無きまでにね)』

ニタァ。と悪女のような笑みを浮かべたAは

胸を踊らせながら、ロッカーに入った体操服に手を伸ばした

『(だから、お前の願いは叶わない)』

「記憶の中の母は、いつも泣いている」

ピタ。

体操服を持つ手が、急に止まった

『･･････』

静寂とした空間。

『･････････』

無意識に、指が耳元のイヤリングに触れていた

『････････････』

[記憶の中の母は]

「ごめん、ごめんねっA･･･私のせいで。私のせいで」

[いつも泣いている]

「あんな"個性"じゃ、Aはヒーローになれない！！」

･

･

ズキンッ──！

『ッつ･･･』

一瞬。

頭の奥の方が鈍く痛み、額をそっと撫でた

『･･････？』

首を傾げながらも、さっさと体操服に着替え

Aは更衣室を出ていく

『･･･一人になりたい』

そして、その足で会場の外へと歩いた

人気の無い所へ行きたいとスタジアムの裏へ。

『(あそこは周りが木々に囲まれていて、少し薄暗い所だった･･･人はあまり立ち寄らない)』

と、考えていた自分を今は呪う。

「よォ、お前か」

『････････････』

見たくないものを見た。互いの顔にそう書いてあった