ほろ酔い。 (ページ5)

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『おい、樹。離れなよ』

男らしいけど優しさのある声に振り向くと
高身長イケメンが田中さんを引き剥がしてくれた。

田中「何だよ～ほくと。お前もAちゃん狙い？」

『違うから。困ってるでしょうが、ほら』

彼はほくとと言うらしい。
ほくとさんは私を見ると面倒くさそうな顔で
"帰った方が良い"と、言った。

『外まで送りますから』

「え、あ、ちょっと！」

少し強引な彼に着いて行こうとお金だけ出して
急いで外に出た。

「あの…！ありがとうございました、」

助けて貰ったことに対してほくとさんに
お礼をするけれど、一向に帰ってこない返事。

「えっと…」

『 …美山さんって』

「は、はい」

突然、名前を呼ばれて少し体が強ばる。

『誰にでも愛想振りまいて疲れないの？』

「…へ、」

想像もしてなかった事を言われて間抜けな声が出る。
ていうか、ほくとさんに言われたことの衝撃がすごい。

『いや、樹みたいな酔っぱらい
だるくて当たり前なのに、なって。

すみません、こんな図々しくって』

頭を少しかいた彼は、じゃあと言って
店内に戻ろうとする。

「あ、あの！」

そう言ってほくとさんの
服の袖を少し引っ張る。

「駅までの帰り道、わかんない…です」

そんな彼を引き止める方法

"可愛い" だけで生きてきた私には

これしか無かった。

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