2話 ページ3
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洗面所の鏡を険しい表情で凝視する彼
「風雅…なにしてんの？」
「寝癖直してんねん、見たら分かるやろ」
「あ、ほんとだ。後頭部ハネてる」
「あ〜〜もうウザいわこの髪」
苛立って自分の髪をくしゃくしゃにする風雅を見兼ねて、ドレッサーからヘアバームを取り出し、風雅の柔らかい髪に優しく馴染ませる。
「！んわっ、勝手になにすんねん」
「風雅様にお礼の寝癖直し」
「風雅"様"ってなんやねんきしょいわ、あとお礼ってなんの」
「毎朝起こしてくれてるお礼」
「…別にお前の為ちゃうわ。お前が寝坊したら俺が先生にガミガミ言われんねん、だから仕方なくや」
「はいはいツンデレツンデレ」
「やかましいわ。あとこのヘアバーム女臭い、甘ったるい」
延々と文句を垂れ流してはいるものの、なんだかんだ大人しくされるがままだし、なんなら私の身長に合わせて少し屈んでくれている。
こういうところに優しさ出ちゃってるんだよなぁ…とにやにやしていたら、あっという間に風雅の寝癖は治まっていた。
「はーいおしまい！かっこよくなったよ」
「うっさいわ、俺先行くからな」
「はいはい」
相変わらず彼の思春期は続いているようで、足早に洗面所を去って玄関から出て行ってしまった。バタン、と切なく閉まった玄関ドアを眺めて少し寂しさを感じていると、再びガシャンと扉が開いて
「あー…、髪、ありがとう」
それだけ言い残し、再びバタンとドアが閉まった。
「はぁ〜〜〜〜〜〜……そういうとこだよ」
このツンデレ毒舌王子、沼すぎる。
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作者名：きゅる | 作成日時：2022年8月15日 4時
