7話 ページ8
「またですか……」
「またです」
昨日も今日も、そのまた前も同じ場所で目を覚ます。
ここ1週間は同じことを繰り返している。
さすがに1週間も2人きりでいれば気まずさもなくなり、以前と比べ会話の数が増えたのはいいものの、さすがにもうそろそろ他の夢を見たいところである。
これを夢と言っていいのかすら怪しいのだが。
「ねえ翡翠、今日は何か新しいことをしてみませんか?」
「新しいこと」
「そうです、新しいことです」
「…具体的には?」
「考えてません」
清々しい笑顔で突然何を言い出したかと思えばまさかの案無し。聞き返しても同じこと言ったので、本当に何も考えずに言ったのだろう。
…もしかして私に丸投げするつもり?
「私は考えませんよ」
「えぇ、そんなこと言わずに僕と一緒に考えましょうよ」
「こんな何も無い場所でなにをするって言うんですか……」
確かになあ、とポンポン物を出しながら何か考えている様子。散らかるのに。
そもそもここはなんでも出せる場所だが、何も無い場所でもある。
実際私が来た時から今までここにはなにか新しいものができたことは無いし、なにか出したとして翌日には消えている。
「あ、そうだ」
「ちょっと冒険してみません?」
「冒険?」
「ここってほんとに何もないじゃないですか、見る限り僕か翡翠が出したものしか見つかりませんし」
「なにか見つからないか辺りを探してみませんか?」
「そんなこと言ったって…ここだいぶ広くないですか?」
初めて来た時もその後も何度か近くを見に行ってみたりしたけれど、とにかく終わりが見えなかった。
恐らく縦にも横にも広いのだろう。それもかなり。
「僕考えてみたんですけど、やっぱりこの場所って明晰夢でできたものだと思うんですよね」
「なんでも出せるんですから空だって飛べると思って」
確かに、明晰夢は全て自分のしたいように出来ると聞いたことがある。
実際夢だと気づけば空を飛んだり好きに人を連れてきたりすることができるって話を聞いたことがあるし。
空が飛べなかったとしてもそれらしい道具を出してしまえばいい話なので、案外彼が言ったことは実現可能なことなのかもしれない。
「やってみましょうか」
剣持さんはそう言って微笑えんだ。
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作者名:a | 作成日時:2023年9月28日 18時