13話 ページ15
「翡翠、こんばんは」
「…あ、剣持さん。こんばんは」
あの後ずっと布団の中に居たけれど、いつの間にか寝てしまって、もう夜になっていたらしい。
夜が来れば剣持さんがいるから考えすぎることもないと思っていたのに、実際はそうでも無かった。
いつものように会話をする気にもなれなくて、申し訳なさを感じる。
「…もしかして、元気ないですか?」
「はい?」
「表情が暗いというか、なんというか」
「…あー、いや。なんでもないです、ほんと」
「ならいいんですけど」
僕でよければいつでも聞きますからと、気を使ってくれている。
話す勇気はない。
私の問題に、剣持さんを巻き込みたくはなかった。
「じゃあ、今日もなにか無いか探しにいきますか?」
「…そ、うですね」
見つけたオルゴールのこと、言った方がいいのかな。
…いや、でも、今日ここに来た時にはどこかに消えていたし。
まだここにあるなら言った方がいいのだろうが、既になくなっているのだから無理に言う必要も無いだろう。
「ほら、翡翠」
「…はい」
当たり前のように差し出された手を取った。
.
「うーん、やっぱそう簡単には見つかりませんよね」
「反対側とか探してみた方がいいのかな?」
「…あー、どうでしょう」
「……ていうか、なんでそんなになにか見つけたいんですか?」
「え、気になりません?」
「いえ、特に」
別に私はこの場所に何があるのか気になりもしていないし、何も無い空間に不満も感じてない。
逆にどうして彼がここまでするのかよく分からない。
「えぇ、飽きるじゃないですか、なにもないの」
「僕は刺激が欲しいんですよ」
「刺激」
「そう、同じ夢に2人きりってだいぶおかしな体験じゃないですか、最初のうちは面白いんですよ」
「でも時間が経てば普通になっていくんです。今日も同じ夢だろうなってなりません?」
「…まぁ、確かに」
「それに、何も無い空間で何もしないってよりかはなにか行動した方が有意義じゃないですか」
「翡翠だっていますし、楽しい方がいいでしょう?」
そんな事を話していたら、なにか音が聞こえた。
聞き覚えのある、それもつい最近。
剣持さんの方を見れば何かないかと遠くの方を見ている。
まだ気づいていないようだ。それなら今のうちに引き返そうか。
「剣持さん、引き返しましょう」
「え、なんで?」
「いいから」
「…いや待って、何か聞こえません?」
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作者名:a | 作成日時:2023年9月28日 18時