10話 ページ11
「……なんの音?」
適当にごろごろしていると、奥の方からなにやら音が聞こえた。
遠くにあるせいか何が流れているのかはほとんど聞こえてこない。
私や剣持さんが出したものでは無いなにかに少し興味が出てきた。もちろん恐怖心も無いわけではない。
もともと何があるか分からない世界で1人だし。
まあただ、ちょっとした好奇心は抑えることができなかった。
「…こっち?」
とりあえず音の聞こえた方に歩いてみる。
少しづつ音が大きくなってきているので、恐らく方向はあっている。
ただ、何故か何が流れているのかは分からない。
音も全部少しづつはっきり聞こえてくるのに、これが何なのかはわかない。
あともうちょっとで見つかるだろうというところで音が消えた。
「あれ…」
音を頼りにするとこができなくなってしまい戸惑ったが、とりあえずはさっきと同じ方向に進んでいくことにした。
.
.
数十メートルほど歩いたところで何かキラキラしたものが見えた。
小走りで近づき手に取ってみると、またさっきと同じ音楽が鳴り始めた。
「これって…」
初めて見たこの場所で自然にできたものに見覚えがあった。
小さい頃、よく母と聞いていたオルゴールだ。
父が母の誕生日に贈ったものだという。
父は恥ずかしいからとあまり聞きたがらなかったが、私と母は毎日のように聞いていた気がする。
毎回毎回、飽きもせず私にその時の思い出話をしていたような。
ずっとリビングに飾ってあって、でももう無かったような気もする。
10年以上前のものらしいし、壊れてしまったのかも。
「………」
「懐かしいな……」
もう何年も聞いていなかったオルゴール。
懐かしさやら寂しさやらいろいろと複雑な感情が混じった気分だ。
もう1度だけでいいからお母さんとお父さんとの一緒にオルゴールが聞きたい。
もうほとんど顔も合わせないので、今更少し気まずさもある。
「……はぁ、私もそろそろ起きる時間かな」
勇気も行動力もなにもかも足りないけれど、
今日は何か、変わるといいな。
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作者名:a | 作成日時:2023年9月28日 18時