1話 ページ2
「……」
重い瞼を開けた時、最初に目に入ったのは白い天井だった。
そこらの病院よりも白く、とても手が届きそうにない。
暗闇に慣れてしまった私には明るすぎて、思わず目を細めた。
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だんだんと目が慣れてきた頃に周りを見渡してみる。
…どこだ、ここ。
辺り1面真っ白、終わりの見えない壁。
あまりにも見覚えの無さすぎる景色に私は混乱していた。
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「死んだのかも」
「死んでませんよ」
聞き取りやすい声が私に届いた。
あなたが死んでたら僕も死んでることになるじゃないですか、なんて呑気に喋ってる。
紫色の髪と黄緑色の瞳が特徴の綺麗な人。
「いやぁ、起きたら急にここにいたんですよね。とりあえずうろちょろしてたら貴方がいたので来てみたんですけど、ここがどこだか分かります?」
「…分かりませんし、そもそも貴方誰ですか」
「あぁ、自己紹介まだでしたね。剣持刀也です。高校2年生です」
剣持刀也。
剣だったり刀だったり、背負っているのは…竹刀?
主張が激しい。分かりやすいけど。
高校生ってことは私より年上。
どこからどう見ても年下の私に敬語使ってるし、真面目な人なのだろうか。
「翡翠Aです。中学2年生」
「年下なんですね。えーっと…Aちゃん?」
「…翡翠って呼んでください。……名前、あんまり好きじゃないんです」
「…そう、ですか?素敵な名前だと思いますけどね」
「じゃあ翡翠、僕と会う前に何か見たりしました?」
会う前。
…無い。そもそもさっき起きたばかりだし、周りを見渡しても何も見当たらなかった。
「…ないです、さっき起きたばかりで何が何だか」
「そっか…僕もなんですよね、起きてすぐそこら辺歩いてたんですけど」
「…ここに来る前…とか、なにかしてました?」
「来る前?……そうですね、寝ようとして目を閉じたはずです」
「…寝ようとした?」
「え、はい」
今の話を聞く限り、私と剣持さんが共通している点は1つ。
眠ろうとしたこと。
それじゃあここは……夢の中、ということになるのか。
明晰夢と呼ぶには意識がはっきりしすぎている気もするけど。
「奇遇ですね、私も寝ようとしていたところです」
「…夢の中ってことですか?」
「…まあ、そういう事になるんじゃないですかね」
不思議なこともあるものなんですね〜、まあよくある事ですよね。
まるでそれが当たり前かのように、一瞬とんでもない事を言っていた気がするが気にしない。
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作者名:a | 作成日時:2023年9月28日 18時