憂鬱。 ページ7
チャイムが鳴ったあと、クラスメイトの大群が教室に押し寄せてきた。
急に押し寄せて来たなと思えば、その三十秒後には、その大群達は移動教室のために廊下に整列していた。
復讐失敗の絶望感に浸る間もなく、性急に時間は進んでいく。
幕を開けた五時間目。家庭科。内容は、調理実習。
あっという間に号令を終えて、いざ調理実習。三角巾に前髪を入れている間、Aは苦虫を噛み潰したような顔で、葵の中でこう呟いていた。
A(ま、まさかあんなタイミングよく回避されちゃうなんて……それに、)
ちらり、と、隣を見た。
A(調理実習の班まで一緒なんて、聞いてないよ〜〜〜!!)
調理実習の班は、先生が適当に決めているらしい。
そして、その先生の手のひらで転がされているAは、転がるあまり目が回って、和瑠子と衝突してしまったようである。
Aは、和瑠子の顔を見た。そのおでこに、もっさりとした前髪が覆いかぶさっている。
それどころか、頬の隣には、横髪が垂れていた。
前髪は愚か、横髪を三角巾に入れないとは……。
果たして三角巾の意味を成しているのだろうか。
A(……髪の毛をきちんと入れないと、ご飯に髪の毛が入っちゃうかもだよね。注意したほうがいいのかな……)
Aは、和瑠子の名前を呼んで、控えめにこう呟く。
A「ね、ねえ、和瑠子ちゃん。髪の毛、入れたほうがいいんじゃないかな……?」
苦笑いのA。しかし、その苦笑もお構いなしに、和瑠子はこうため息をついて、気だるげに言った。
和瑠子「はあ? ギャルは職業だから。髪の毛入れるとかありえないんだけど」
その冷酷な言葉に、Aは凍りつく。
A(ギャルは職業じゃないよおおおおおお!!! それにギャル云々の前に、三角巾に髪の毛を入れるのは衛生的にも常識的なマナーだよ!!)
しかし気の弱いAのこと。結局「そっかぁ…」と悲しげに呟くしかなかった。
和瑠子は少し機嫌を悪くして、「……ふん!」と唇を突き出すと、ぷぃっとそっぽを向く。
その後は、何ら問題なく調理実習が進んだ。
何も問題が起きなかったことに、Aは安堵しつつ、その努力の結晶及び味噌汁を啜る。
……明らかに食べ物のそれではない、コリコリとした食感の、何かがAの歯に当たる。
異物感を覚えたAは、その何かを口の中から取り出してみた。
和瑠子の髪色と同じ色の髪が、口の中から出て来た。
ラッキーカラー
あずきいろ
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甘草リコ - こんな駄作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。10月より新作品を更新する予定ですので、気長に待っていただければと思います。よろしくお願いいたします。 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 95ef1aa62b (このIDを非表示/違反報告)
甘草リコ - 皆さん、大変申し訳ないのですが、パスワードを忘れてしまい更新不可となってしまいました。見てくださった方々には大変申し訳ございません。次こそ、皆さんに素晴らしい作品を届けられるよう頑張っていきたいと思います。 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 95ef1aa62b (このIDを非表示/違反報告)
甘草リコ - むつさん» あああ!! 返信遅れてごめんなさい!! いじめっ子に浣腸……卒業するときにいつかやってやりたいと考えていまs((( ゆっくりやすみます。あと誤字の指摘ありがとうございます!!!!!! (2022年6月21日 21時) (レス) id: b10498da77 (このIDを非表示/違反報告)
むつ - はじめまして!作者さんをいじめる人なんて、浣腸s……((すみませんでした。主人公ちゃんみたいにかっこよく言い返したいなと思っても、現実ではなかなかできませんよね……。ゆっくり休んでください!あと、「心」が「葵」に変換されちゃってるかな?と思います! (2022年6月14日 19時) (レス) @page12 id: 7d80cfa994 (このIDを非表示/違反報告)
甘草リコ - なずなさん» なずなさん……! ありがとうございます。本当に嬉しいです。いじめは本当に消滅してほしいですよね。いつか帰ってきます!! 絶対!! 本当に見ていてくれてありがとうございました。 (2022年6月10日 22時) (レス) @page12 id: 95ef1aa62b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘草リコ | 作成日時:2022年5月3日 20時