モンスターボールが10個 ページ11
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「中原幹部、首領がお呼びです」
「あぁ、直ぐ向かう」
汗を拭うことなく、早口で報告する黒服さん。
幹部…そっか、中原さんは幹部なんだ…って、
え!?!幹部?!!?
ちょ、ちょっと待て…今まで私、幹部様になんて口を…?
ど、どどどーしよ?!私、此処で殺されちゃう?!
「…うし、じゃあ今から俺の上司に会うから手前も…って、大丈夫か?」
『あひゃっ?!ぜ、全然大丈夫ですます!!』
「ですま…?」
『な、何でも御座いませんわ!!おほ、おほほ…』
「…うし、此処出たら病院行くぞ」
だ、だって!仕方ないじゃん!!幹部様相手に気軽に話すとか無理だもん!!!
『か、幹部様がそう仰るなら、つ、着いていきまひゅよ!』
「…あー、そういうことか。…確かに此処では幹部って役職だがよ、手前にとっちゃ俺ァただの世話焼きな奴、そういう認識は無理か?」
此処では幹部で、私にとっては世話焼きなおじさん…?
…な、成程!言われて見ればそうだ!!
なーんだ!なら緊張しなくていいや!
『無理じゃないです!世話焼きなおじさん!((ニコパーッ』
「おじっ…、言っとくが俺ァ22だからな…?」
『うえ!?あ、そうだったんですか?!』
凄く整ってるけど童顔だし、それに背も…ね、あれだし、もっと若いのかと思ってた…!!
「おいおい…手前にゃ一体何歳に見えてたんだ?…っと、悪ィが此処からは私語厳禁な」
『は、はい…!』
エレベーターで最上階まで移動し、此処からは私語厳禁。馬鹿な私でもこれくらいは分かる。
あぁ、この階の何処かの部屋に行くんだ…
足音が全くしない程の上質な絨毯を歩いた先にあった、一際大きな扉。
「…首領、中原です」
此処が、ボスさんの部屋…
「あぁ、入り給え」
この声の印象といえば、不思議な程に落ち着いていて、けれど何処か圧迫感のある、そんな声だった。
「失礼します」
『…し、失礼します…』
中に入るとすぐ、ボスさんと思しき人と目が合う。何か値踏みをしているような、嫌な目をしていて少しだけ怖かった。
「遅くなり、大変申し訳ございません」
「あぁ、気にしなくていいよ。ちゃんと無傷で連れてきたようだしね」
ドア越しではなく直に聞く声は、また迫力が違う。今すぐにでも逃げ出したいと思う程低かった。
そして緊張の余りトイレに行きたい。
「君、名前は?」
突然向けられた質問。
あぁ、やばい。一気に漏れそう。
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作者名:ゆちゃまる | 作成日時:2019年7月21日 16時