犬とベイビー2 (ページ8)

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彼女が俺の視界に入った瞬間

心の底から、安心した。

来ないんじゃないかなとか

来ても帰されるんじゃないかって

内心不安だったから。

彼女の目に映る俺であって俺じゃない。

だけど、それをどうにかしたくて

言葉を続けてみると彼女から驚くべきお誘い。

”ウチくる？”

色んな事を考えて、出した答えだろうけど

今の俺にはダメージ100

世の中の男は、みんなそうだ。

好きな人の誘いをことわる理由がない

それは疚しさでも下心でもなんでもなく

素直に応えたいという本能だよね。

「行って大丈夫？」

だけど、躊躇する理由はある。

《大丈夫。外にいる方が危ないよ》

「うん、ごめん」

《そんな顔しないで、私は気にしてないから》

「うん」

《ただチャニョルに迷惑かけるのは嫌だし》

「それはこっちの台詞。笑」

《あはは、そうかもね。》

彼女の家はここから約10分

並んで歩きたいところだけど

離れてあるくね。と先手を打たれてしまった。

そこまで気にしなくてもいいのに。

とは、思いつつどこで誰が見ているかなんて分からないから

俺はただ頷いた。

彼女が俺の5歩先を歩く

よくよく見ると財布と携帯しか

持っていなくて

急いで来てくれた事が分かる。

ときどき振り返って視線が重なり

自分でも胸が高鳴るのが分かった。

そして、真新しいアパートの前に辿り着いた。

彼女は振り返り”ここ”と合図を送る

オートロックを解除し

ドアを最大限に開いてくれて

吸い込まれるように俺は彼女の後に続いた。

《何だかドキドキするね》

「逆に怪しいかもよ？笑」

《そうかも。今度は普通に歩こっか》

「うん」

”今度”と言うフレーズはズルい。

期待してしまう。

いや、期待していいのかな。