47話 ページ24
追いかけた一織は話しかけるが、
三月は傷つき、悲しそうな顔をしていた。
一「兄さん、どこに行くんですか?」
三「おまえまで付き合わなくてもいいんだぞ」
一「そんなことは出来ません!
実家に帰るにも電車は終わってるでしょう?」
三「あ...、そっか...頭から飛んでた...」
一織は付いて来てよかったと
聞こえないように呟いた。
三月が泣きそうな声で話し出す。
三「...... 一織さ......」
一「はい」
三「...昔、オレがオーディション
落ちまくってた時、色々アドバイスくれたろ。
小柄なとこ活かせとか、かわいい系で行けとか」
一「...はい」
三「だけど、オレ...
おまえのこと怒鳴っちまったよな。
作戦立てて受かりたいわけじゃない。
指図するなって。オレのことはオレが決めるって」
一「......」
三「...あの時はごめんな...
今、急に、そう思った」
一「兄さん...」
三「一織はなんでも出来るんだから
オレに構わず、自分のことやってろって思ってた。
さっきの大和さんとおんなじだった。
おまえなんかに、オレの気持ちがわかるかって。
でも、そうじゃない......そうじゃないんだよな......」
三月は気付くことができた。
三「一織はただ...
オレのこと心配してくれてたんだよな」
一「な...泣かないでください、兄さん
私のことなら、いいんです。
......もういいですから......
兄さんを傷つけてしまったことを
許してくれるなら、もう...」
三「ごめんな、一織...
...っ、人の言葉をちゃんと聞けなくて、
人にちゃんと伝えられなくて、情けねえよ...
必死に思ってたのは、嘘じゃねえのに...
なんで、もっと、うまく...」
三月は、一織の心配に気付かず
人の話を聞くことが出来ていなかった
あの時の自分と、今の大和が重なって見えた。
一「兄さん...」
その時、突然車のクラクションが聞こえた。
どうやら2人に向かって鳴らしたようだ。
一「...あ...」
運転席から顔をのぞかせて笑っているのは
百「あはは! びっくりした?
夜遊びしちゃだめじゃんかー。
一織はまだ学生だろ?」
三「...百さん...」
百「......どうしたの、その顔...
おいで 乗っていきな」
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作者名：桜華 | 作成日時：2019年8月20日 3時
