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「 … どこや? 」
東京に着き、彼女から送られてきた住所。
何度も見返して歩き回っても、初めての場所で混乱してしまう。時計を見ると、集合時間を過ぎようとしている。
” ごめん、遅れる! ”
すぐに既読がつき、 了解!ゆっくりでいいよ とメッセージが返ってくる。申し訳ないと思いながらも、メッセージアプリを閉じて再び道を歩く。
東京はやっぱり都会やなぁ、と無数の建物を見て思う。こんなところで、彼女が頑張っていると思うと本当に感心する。俺やったら疲れてまう。
俺のことを待つ彼女の姿を思い浮かべ、顔が綻ぶ。そして頬を叩き気合を入れ、歩く速度を早める。
「 …… ん?これちゃう? 」
長く時間をかけてようやく、目の前のアパートとメッセージの位置情報が一致した。やったー!とひとりでガッツポーズをし、階段を上っていく。
2階の廊下に彼女の姿が見える。
大きく手を振り、名前を呼びかけようとした時。
彼女以外の、もう一人の影が瞳に映る。
「 …… もう、帰ってきちゃうよ? 」
「 いいじゃんスリルあって。それに、大阪から来るんだからまだ来ないっしょ 」
「 そーだね 笑 …… 中、入る? 」
「 そっちもその気じゃん 笑 」
「 だって〜 笑 」
親しげに会話をして、部屋の中へ入っていく。
嫌な予感が的中。絶望のさらに深い感情だ。
俺は動けず、ただその扉を見つめた。
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作者名:よもた | 作成日時:2024年1月31日 0時