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「 神ちゃん 」
名前を呼ばれてようやく、自分が屋上にいるということに気づく。気づいてもなお、現実ではないような感覚が残っている。
視界がぼやぼやとする。
…… あーあ、泣いてもうてるんや。恥ずかし。
「 俺がフラれたん、怖いからやなかったな 」
「 …… 」
「 普通に彼女おったからなんやな。ははっ、ほんまとんだポジティブ思考やったわ 」
ほんま、なんであんないけると思ったんやろ。
男っていう時点で、1つでかいハンデ背負ってんのに。
「 のんちゃんは、知ってたん? 」
「 …… ごめん。ほんまにごめん。神ちゃんのこと応援したい気持ちが勝ってもうて、 」
「 ええねん。のんちゃんが謝る必要ない 」
「 … でも、 」
「 シゲを好きになった俺が悪いねん、 」
自分で吐き捨てたセリフが情けなくてまた涙が溢れる。こぼれ落ちるのと同時に、のんちゃんが俺を抱きしめた。
「 …… 俺 、神ちゃんのこと好き 」
「 え、? 」
「 シゲに彼女おるって分かってたのに、どんどんイメチェンしてかわいくなってく神ちゃん見とったら、 もっと見たい って思うてしもうて、言いだせへんかった 」
「 … 」
「 ずるいヤツでごめん。 」
「 ……、、っ、のんちゃん……、 」
断らなきゃいけないのに。
静かに涙を流すのんちゃんを見てしまったら、胸の中で泣きながら彼の名を呼ぶことしかできなかった。
のんちゃんは俺が何を言いたいか分かっていた。
「 ええねん。ありがとう。これからもよろしくな 」
肌にあたる風が、いつもより冷たかった。
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作者名:よもた | 作成日時:2024年1月31日 0時