ご先祖様がついてくる【鬼滅の刃】

#37　二人のわがまま ページ37

杏寿郎の死から二ヶ月後。

凧揚げしながら私は考える。

二ヶ月経ってようやく透き通る世界に入れた。

だけど縁壱さんには言ってない。

自分の実力不足でまだ入れてないと嘘をついている。

果たしてこの嘘が縁壱さんに通用しているのかは解らない。

だって私は縁壱さんと同じように真顔で鬼を斬るようになったのだから。

杏寿郎に言われた言葉を胸に秘めながら、私は鬼を狩っている。

鬼に煽られても、罵倒されても私は一切の闘気も出さず鬼を斬っている。

そのおかげで階級が【丁】に上がった。

【戊】の一つ上。

文通している村田さんは誰かと合同で任務をおこなっているとのこと。

この二ヶ月大きな出来事はない──とは言えない。

なぜなら知らない男の子三人から蝶屋敷に来るたびに言い寄られてるからだ。


「決闘しようぜ！」

「結婚して！」

「身体を安静に！」


と、三人別々のことを言いながら私に詰め寄って来るのだ。

その度に縁壱さんが、


縁壱「Aに構うな」


と一刀両断してくれるんだけど、私にしか聞こえないから意味がない。

アオイちゃんが引き剥がしてくれるからありがたい。

今度三色団子をお礼に持っていこう。

あと、一つ言いたいことがある。


縁壱「A」

『はい、なんでしょうか』

縁壱「私のわがままを聞いてくれないか？」

『ご先祖様の頼みなら何でも御申し付けください！』

縁壱「それなら、抱き締めても構わぬか？」

『はい！いつでも構いません！！』


そう、これだ。

縁壱さんが最近甘えてくるのだ。

とっても可愛いうちのご先祖様。

凧揚げしている私の背後に回って後ろから抱き締めてくれる。

顎を私の右肩に乗せながら凧を見る縁壱さん。

あ"あぁ〜〜可愛い"ぃ！

思わず濁音が声から出そうになりなんとか堪えることに成功。

めっちゃ可愛い。


縁壱「……兄上」


縁壱さんがお兄さんのことを考えるときはいつも空を見ている気がした。

縁壱さんの「兄上に会いたい」という願いを叶えるため、今日も頑張ろう。

昨日の自分より、今日の私は確実に強くなってるんだから。


縁壱「Aは凧揚げの他にしたいことはあるか？」

『縁壱さんとならなんでも構いません。特にこれと言ってやりたい事が見つからないので、すあま食べ比べとかどうでしょう？』

縁壱「喉に詰まるぞ」

『うっ……それなら、山を駆け上がることでもしましょうか。今度は私のわがままです』

縁壱「いいだろう」


縁壱さんは微笑んだ。

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