#22 自分じゃない誰かを前に ページ22
正直、赫刀と透き通る世界の意味がよくわからない。
だけど縁壱さんにはそれがもうできているということはわかっていた。
縁壱「……A」
布団の中で仰向けにしている私の隣に縁壱さんは来ると、私と同じように横になった。
顔が近くて恥ずかしい。
縁壱「ここから先は険しい道のりだ。幾星霜幾星霜鍛錬をこなし、文字通り血反吐を吐くほど努力をしないとならない」
真剣な目つきでそう言われた。
縁壱「体力の限界、命の限界を超えるぎりぎりまで己を鍛えなければならない。鬼の前で事切れるかもしれない。それでも──」
ギュッ、と布団を握る拳に力がいく。
縁壱「それでも、鬼狩りを続けるか?」
『……ふふ』
私は少し笑った。
『笑ってごめんなさい。確かにそれは険しい道のりですね、ご先祖様。だけど一度決めたことは最後まで貫き通せと祖父と父が言ってました。だから私は幼い頃からやっていた剣術をやめることはしなかったんです』
『それに、自分だけ幸せな未来を掴むなんて嫌です。私はただの女隊士。私にできることは一体でも多く鬼を倒すこと。願わくば鬼舞辻討伐の夢。たとえ右手がなくなっても左手があります』
『左手がなくなったら口で刀を咥えます。足がなくなったら義足をはめればいい。私が死んでも誰かが必ず鬼舞辻の頸を斬ってくれます。だから私は要するに捨て駒です。それでも──』
私は笑った。
『それでも、自分じゃない誰かを前に行かして私は事切れます。鬼狩りとは、そういうことでしょう?』
縁壱さんは私を抱き締めてくれた。
幽霊だから抱き締める感覚なんてないのに、半透明だし何も感じないはずなのに。
なぜだか私の目から涙が出ていた。
縁壱「……すまない」
『より、いちさん…?』
縁壱「すまない」
なんで、そんな悲しそうな顔をしてるんですか?
私は思ったことを言ったまでですよ?
だって本当のことでしょう?
自分が死んでも代わりはいる。
自分が死んだら誰かが仇を撃ってくれる。
私が死んだら──……
『うっ……うぅっ……』
私が死んだら、誰かが悲しむ。
自分以外の誰かを前に行(生)かしたいんだ。
たとえ隣に私が居なくても。
生きていて欲しいんだ。
なんて身勝手でわがままなんだろう。
私は気が済むまで泣いていた。
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灰色サーモン - まってwwwよくよく考えたら縁壱さんの顔で夢主がキャラ崩壊してるwww (2020年5月15日 2時) (レス) id: 99f545fffc (このIDを非表示/違反報告)
名無し61903号(プロフ) - よりよりさん» とても綺麗で艶がある髪ですね。それに着物まで考えておられて素晴らしいです。夢主の容姿はそのようなイメージでいいですよ。私は読者の皆様が考える夢主の姿で物語を読んでもらえると嬉しいのです。気に入りましたありがとうございます(人*´∀`)。*゚+ (2020年3月10日 22時) (レス) id: f947700d9f (このIDを非表示/違反報告)
よりより - https://cdn.picrew.me/app/share/202003/15599_3aYynxVu.png Picrewの 馬酔木ヒカルさんの 和装女子メーカーをお借りしました 夢主ちゃんは こんな感じかなと勝手にイメージしてみました お気に召さなかったらすみません。 (2020年3月10日 22時) (レス) id: f27088ec53 (このIDを非表示/違反報告)
海月ひかる(プロフ) - 設定の所に、子孫と書いていますが、遠いなら末裔では?細かくてすみません (2020年3月10日 6時) (レス) id: 490f2474fb (このIDを非表示/違反報告)
わんこ - 緑壱さんが尊い()神作ですね。更新ふぁいとです! (2020年3月1日 15時) (レス) id: e04dff07ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年2月22日 13時